SDGs促進の為に、物流でできる事は何か?考え方と解決策例をご紹介!

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# 人手不足
2021-08-16
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世界の人々が達成していかなければならない17個の目標を定めた「SDGs」は、物流業界からもさまざまなアプローチが試みられています。なぜ今物流業界でSDGsへの取り組みが活発になってきているのでしょうか。
今回は、SDGs促進のために物流でできることや、物流SDGsの考え方と具体的な解決策の例について解説します。

SDGsとは?

SDGsは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った言葉であり、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」と表現されます。2015年9月に開催された国連サミットで初めて採択された目標で、2016年から2030年の15年間をかけて達成するための「17の目標と169のターゲット」が定められています。

SDGsの17個の目標には、貧困や飢餓をなくすことや、すべての人に平等な教育機会を提供することなど世界の貧困を解決するための目標のほかに、先進国でも課題となっているジェンダー問題の解消などが掲げられています。

ほかにも、エネルギーや産業・暮らしやすい街づくりなどの産業の観点から見た目標や、地球温暖化などの環境問題、国際平和の実現など、趣旨の異なる全部で17個の目標が設定されており、その一つひとつの目標をさらに細分化した169個のターゲットが定められています。

SDGsとESGは何か違う?

ESGは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(企業統治:Governance)」の3つの考え方を組み合わせた言葉です。主に投資の世界で使われてきた概念であり、企業が環境問題や社会問題、企業統治に対して積極的に取り組んでいる企業に対して投資を強化しようという考え方です。

これまでは企業の売上やキャッシュフローのような数値化されたデータが投資の判断材料になっていましたが、最近ではESGを基準に投資先を決定する投資家が増えてきています。ESGの例としては、CO2削減や廃棄ロスの削減、働き方改革によるワークライフバランスの強化、取引先との経営の透明化などが挙げられます。

一方、SDGsは「すべての国のあらゆる人が取り組んでいかなければならない目標」のことであり、ESGのような「企業が投資家から投資してもらうための手段のひとつ」という考え方とは性質が少し異なります。

物流にSDGsが求められる理由

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SDGsに掲げられている17個の目標のうち、物流の観点からアプローチできると考えられる目標はいくつかあります。まず「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」では、CO2排出削減への取り組みからエネルギーをクリーンにしていくという目標達成に貢献できる可能性があります。

また、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」においても、現代の産業において物流は重要な役割を占めており、人々にとって欠かせないインフラとして産業発展に貢献できるでしょう。

「10.人や国の不平等をなくそう」を見ても、物流が万全に整備されれば、世界中から貧困や飢餓に悩む国々へ食糧を供給して食糧問題を解決できるかもしれません。

このように、物流業界は、SDGs関連問題の解決への大いなる役割を秘めていると考える事ができます。

物流業界のSDGsに対する取り組み

物流業界では、SDGsに対するさまざまな取り組みが行われています。ここでは、代表的な3つの取り組みについて詳しくご紹介します。

共同輸配送を通じた低炭素物流の推進

日本のCO2排出量の中で、何らかの運輸によるものは全体の約2割を占めています。そのうちの1/3以上は物流によるものであり、物流を改善してCO2の削減を達成することはSDGsを達成するためにも急務であるといえるでしょう。

そこで、複数企業が輸送トラックを共同で利用する、共同輸配送による低炭素物流の推進が注目されています。

これまでの自社便による配送は、積載率が低いトラックを大量に走らせることで手間やコストが増加して非効率な運用になり、CO2の排出量も増加させていました。しかし、同じエリアの企業や荷主が共同輸配送を行うことによって一台ごとの積載率が向上し、少ない台数のトラックで効率的な輸送が可能になり、CO2の排出を抑制するとともに、物流コストの削減も期待できます。

共同輸配送によるCO2排出抑制を推進するための取り組みとして、政府関連組織による補助事業も実施されています。
代表的な例のひとつとして、環境省の地球環境局地球温暖化対策課は、国土交通省連携事業として事業に参画する事業者に対して経費の補助を行っています。地域内輸送の効率を改善するために共同輸配送の設備を導入する事業者や、幹線輸送のモデル構築を推進するための設備を導入する事業者に対して経費の1/2を補助する施策などによって、低炭素化を広く推進しています。

ホワイト物流

ホワイト物流とは、近年ますます深刻化しているトラック運転手不足を解消して物流の安定供給を実現するために、物流業界の労働環境をホワイト化する運動のことです。物流需要が高まり続けている反面、トラック運転手は不足し続けており、運転手の不足によって本来は運ばなければならない荷物を運べない状況に陥るケースも少なくありません。

トラック運転手が不足する背景には、輸配送業務の過酷な労働環境があります。出荷元や納品先で長い待機時間が発生したり、積み込みや荷卸しなどの重労働を負担に感じたりすることによって、労働者が集まりにくい環境になっているといえます。

このような環境を改善するためには、物流の効率化をはかって長時間労働や肉体労働の負担を軽減しなければなりません。その為には、後述するシェアリング倉庫の活用を通じた、配送距離を減らす事もひとつの手段です。

ホワイト物流運動によって企業と荷主が一丸となって生産性の向上に取り組み、女性や高齢のトラック運転手も働きやすいホワイトな労働環境を作りだすことにより、SDGsの目標「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」「10.人や国の不平等をなくそう」などにもアプローチできる可能性があります。

物流総合効率化法

物流総合効率化法とは、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」という正式名称を呼びやすく短縮した法律の名称のことです。物流業者が相互に協力して物流の効率化や生産性の向上に取り組む際に、所定の条件を満たしていればその取り組みを支援する、という内容について取り決められています。

この法律の規定を満たすと、物流の効率化事業を立ち上げる際に一部経費を補助してもらえたり、許可制度に関して優遇措置を受けられたりします。そのほかにも、事業に使用する施設・倉庫については税制が優遇される、規制の緩和措置が適用されるなどのメリットがあります。
このように国が積極的に支援策を打ち出すことによって、物流の効率化に取り組む企業や荷主を増やし、国全体の物流環境を改善するねらいがあります。

物流SDGsの実現に向けて、まずできること

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物流SDGsを実現するためには、「可視化」「需給予測」「コミュニケーション」の3つのポイントを意識して日々の運用を進めることが大切です。

情報を可視化する

物流を通じたSDGs達成のためにも、まずは現状の物流業務を可視化する事が重要になります。原料の調達から製造、販売、出荷・配送までの一連のプロセスを洗い出すことで、どの部分がボトルネックになっているのかが明確になります。
このように、「どの部分を改善しなければならないのか」を把握することが、物流SDGs達成の第一歩です。

需要と供給の予測

需要予測のずれによる過剰生産は、多くの廃棄ロスを生み、原料が無駄になるばかりか廃棄のための燃料が必要になって環境に悪影響を及ぼします。そのため、「必要な分だけ生産して市場に供給する」というサイクルを徹底して、過剰生産による廃棄ロスを招かない体制づくりを進めることが重要です。

従来式のアナログな需要予測はもちろん、需要予測システムなどを活用して正確な需要と供給の予測を立てることで、市場に適性な量を供給できる体制を整えられます。

共有・報告・コミュニケーション

社内・社外問わず、常にコミュニケーションをはかって情報を共有することは大切です。物流には社内のあらゆる部門が関わってくるため、製造現場や営業部隊、物流現場などさまざまな部門を巻き込んで連携する必要があります。

加えて、荷主と企業が協力して効率化に取り組まなければ、物流を真の意味で効率化することは叶いません。配送ルートの見直しやSDGsを達成するための企業目標の共有など、積極的に手を取り合って物流SDGsに取り組むことが大切です。

SDGs実現のためのソリューションとしての「WareX」

物流業界もSDGsを達成するための取り組みを積極的に行っていく必要があり、そのためには物流の生産性を向上させるソリューションの導入が効果的です。例えば物流コストや人的リソースの削減をはかるなら、倉庫シェアリングサービスを活用してリソースの無駄遣いを削減する方法が考えられます。

シェアリング倉庫サービスのWareXでは、荷主と倉庫をマッチングして必要な時に必要な倉庫スペースを利用できます。経営面におけるコスト削減と物流SDGsの双方にメリットがあるため、ソリューションの選択肢のひとつとしておすすめです。
WareXの事例インタビュー記事

まとめ

17の目標と169のターゲットを定めたSDGsは、世界に生きる一人ひとりが意識していかなければならない共通の課題です。暮らしに密接に関係している物流の観点からSDGsの達成にアプローチすることで、多くの目標の達成に近づきます。

まずは社内の情報を可視化し、自社の物流において解決しなければならないポイントがどこにあるのかを正しく見極めましょう。そのうえで、荷主と事業者が密なコミュニケーションをはかりながら、業界が一体となって物流SDGsに取り組んでいくことが大切です。