アパレル業界特有の物流波動に備える「リスク分散」としてのWareX活用

# 倉庫提供者
# アパレル
# 空きスペースを活用したい
株式会社エル・ロジスティクス
2023-12-13
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課題
物流波動や事業リスクが大きいアパレル業界で持続可能な物流拠点を実現できないか
解決
WareX導入で「空きスペースの有効活用」と「リスク管理」の双方を両立

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はじめに

マリメッコ(Marimekko)、アー・ペー・セー(A.P.C.)、イルビゾンテ(IL BISONTE)などの人気ブランドを擁する大手アパレル商社ルックホールディングス様。その物流子会社として2008年に設立された株式会社エル・ロジスティクス様は、ルックグループ全ブランドの物流機能を一手に担い、その成長を後方支援しています。

同社では元々自社グループの商材のみを取り扱っていましたが、空きスペースの有効活用を進める中でWareXを導入していただきました。その背景にはアパレル業界特有の事情があるとお聞きし、千葉県船橋市に構える国内唯一の物流拠点にて、同社取締役・菊池様に詳しいお話をうかがいました。

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エル・ロジスティクス様について

革新を続ける老舗レディースアパレル商社から生まれた物流専門会社

まずはルックグループ様とエル・ロジスティクス様について教えていただけますか?

1962年創業のルックグループは、レディースアパレル業界においては老舗的存在です。変化の激しい業界にあって継続的に事業を展開してこれた最大の理由は、今まで培ってきた資産を活用して、革新を続けている点です。古くから自社ブランドの生産を行い蓄積された「モノづくり」のノウハウと、海外ブランドから得た「グローバルのトレンド」を連携させ、新たな価値を発信し続けています。

また近年はファッションに限らず、ライフスタイル全般で幅広くブランド価値の提供を行っています。レディースアパレルの分野で培ったノウハウを、衣食住の新たな分野でも活かそうと挑戦しています。

グループ傘下の物流会社として2008年に設立された株式会社エル・ロジスティクスは、元々は社内の物流部門が会社として独立したものです。ルックグループのすべての物流機能を担っており、業務ドメインの中心はあくまで自社の物流になりますが、そこで得たノウハウをベースに、外部に向けた物流サービスの提供を行っています。

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アパレル業界から生まれた物流会社ということで、一般的な物流倉庫と比べてどのような特徴があるのでしょうか?

衣類のほか帽子、バッグ、シューズなど、アイテムが多岐にわたるのに加えて、商品ごとにカラーやサイズの展開があるため、他業種と比べると管理が複雑な点はアパレル物流の特徴かもしれません。

それと季節商品ということで、需要の変動が激しいのも特徴です。季節以外にも、SNSなどの流動的な要素が複雑に絡み合って需要の変動が生じます。こうした動きに柔軟に対応するには、より専門的なノウハウを蓄積させ物流の高度化をめざす必要があります。

一般的な物流倉庫と大きく異なるのは、物流のひとつ手前の工程といわれる「検査・検品」の機能が完備されている点です。海外からアパレル商品を輸入した場合、そのクオリティチェックを行うために他社の検査場を経由するのが一般的です。そこで合格した商品だけが物流拠点に運ばれるという流れです。当社の場合は同じ倉庫内で検査・検品できますので、輸送のコストがかからずリードタイムも圧縮できます。コンベア検針機やX線検査機といった高性能な設備を揃えており、万が一にも針や異物が混入することがないようにしています。

それに加えて、これは当社の最大の特徴になりますが、他では類を見ない規模と品質の高さを誇る縫製機能が備わっています。輸入した商品の中には補修が必要なものもあり、そうしたお直しや縫製不良に、この場で縫製のプロフェッショナルが対応します。海外のクオリティチェック基準と日本国内の基準とではまったく異なるため、海外で合格しても日本の基準をクリアできないことって、実は少なくないんですね。そのため国内基準で厳しくチェックして、クリアできなかったものは補修、汚れが見つかった場合はクリーニング、それらすべての機能がこの倉庫内に備わっています。

近年はインポートブランドの取り扱いが増えてまして、イタリア、フランス、フィンランドが主な輸入先となります。東京で陸揚げされたコンテナをここでデバンニングしてクオリティチェックを行い、全国の店舗に向けて発送します。EC販売分についてもここから個人のお客様あてに発送しています。

当社グループとしては国内唯一の、物流プラスアルファの機能を持った施設ということになります。

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WareX導入の背景

WareX導入のきっかけは予測できない変化に対するリスク管理

アパレルグループ傘下の御社が、他社の貨物を受け入れるようになった背景について教えていただけますか?

アパレル業界に限ったことではありませんが、消費者ニーズの多様化や変化のスピードが速い中で事業を成長させていく、新規ブランドをヒットさせるというのは容易なことではありません。それこそがファッションビジネスの醍醐味ともいえますが、一方でブランドの改廃が割と頻繁に起こるという現実もあります。
非常に急激に伸びる場合もあれば、逆にあっという間に縮小することもあり、中には海外ブランドが日本法人を立ち上げることになり契約が途中で終了してしまったり、そういった予測できないリスクが常に付きまとう業界です。

物流面も同様に、必要なスペースの拡縮が頻繁に起こりますし、しかもその振れ幅が非常に大きいんですね。そうしたリスクに備えようと、例えばスペースに余裕があるのであれば、遊ばせておくよりも少しでも他社の商品をお預かりして、いわゆる外貨を稼げないかというところからスタートしました。本格的に動き出したのは、ここ4~5年になります。

5年ほど前になりますが、当時取り扱っていた大型インポートブランドの一つが日本法人を立ち上げるということで、いろいろと協議したものの、結果的に契約が終了になったことがありました。そのブランドは当社グループで順調に育っていたところで、その時点ですでにかなりの規模に成長していました。突然の契約終了で、倉庫のスペースが大きく空いてしまったんです。

それが引き金となり、このままではもったいないから空きスペースを有効活用しようと。当初は知り合いに預けるものがないか聞いて回っていましたが「2ヶ月間だけ預かってほしい」というようなお話が多く、もう少し継続性のある案件に結びつけていきたいと考えるようになった矢先にWareXとの出会いがありました。元々お付き合いが深かった三菱商事(※)から紹介を受けてスタートしたという流れです。すごくいいタイミングでした。
※WareXは2022年7月に、三菱商事から新設子会社のGaussyに事業譲渡されました。

お預かりする貨物はアパレルに限定せず、臭いや汚れが発生しないものであれば基本的には幅広く受け入れています。初めて取り扱う商材であっても、スタッフはみな興味津々でポジティブですよ(笑)。

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WareX導入のメリット

WareXでなければ実現できなかった「空きスペース活用」と「リスク管理」の両立

WareXを導入する上で決め手になったのは、どのような点でしょうか。

私たちが考えるWareXの最大のメリットというのは、契約をWareXに一本化できるという点です。新規に取引を開始する場合、必ずグループとして然るべき手続きを経て承認を得なければなりません。いわゆる稟議のようなものですね。そうなると、少量貨物や短期保管の案件はなかなか承認が下りにくい。リスクに対してリターンが見合わなければ、経営として当然の判断です。

これは先に申し上げたアパレル業界におけるリスク管理という観点に通じています。やはり事業リスクに対するアンテナの感度は、他の業界より高いかもしれませんね。大小さまざまな案件すべてに対して与信管理を徹底できるかというと、自社だけではなかなか難しい部分があります。その点、御社との契約の中で包括的に取引ができるというのは、与信面だけではなく、現場業務としても非常にスムーズです。会社間の信頼関係はすでにありましたし、安心してスタートできましたね。

かつて、今のように空きスペースを活用するという動きをしてなかった頃は、事業の規模に合わせて「拡大してきたから移転しようか」ということがあり、その逆の可能性もあったわけです。例えばブランドが半分に減り、倉庫が空きだらけになってしまったら、移転を検討しなければなりません。拠点を移転するとなると、それだけで億単位の費用がかかるので、グループ全体からすると非常に大きなリスクです。

不確実性の高いアパレル業界だからということではありませんが、リスク分散のためのポートフォリオ戦略が必要です。WareXを通じて自社商品以外のさまざまな商品をお預かりすることで、持続可能な物流拠点としてのリスク分散になればと考えています。

実際にWareXを導入いただいて、お気づきになったことやご感想をお聞かせください。

私たちが直接営業するのは、中規模もしくは大規模の案件になります。WareXの場合はそれに比べると比較的コンパクトな案件が多く、最初はどうなのかなという思いはありました。ところが、実際スタートしてこれが積み上がってくると、パイとしては中規模案件と同等で、非常に有効だということに気づきました。採算は希望通りとはいかない案件もありますが、スペースを遊ばせておくよりも、少しでも収入が補えればという点では非常に良かったと感じています。

先ほど申し上げた通り、WareXとの契約でなければこんなことはできなかったわけです。小規模の案件を個別に直接契約するのでは、リスクに見合わない。それでも数万円、数十万円という売上が積み上がってくると、グループ全体の経費圧縮という意味では非常に大きいですよね。だから、私は手応えを感じています。

他社で以前聞いた話ですが、数千坪単位の契約が突然終了になり、スペースが丸々空いてしまったと。そうなると、年間億単位の赤字です。だから、コンパクトな案件を積み上げていくというのは、リスク分散の意味でも悪くない戦略だと考えています。仮に1件、2件、契約が終了したところで、売上に対するインパクトは大きくはありませんから。

コンパクトな案件というのは、先々の空きスペースの見通しが立ちにくい中だと、扱いやすいということも実情としてあるんです。それに、最初は少量だったものが徐々に拡大するということもあります。貨物量も契約期間もさまざまな案件がいくつかある中で、全体としてはじわりじわりと拡大してきており、総論で言いますと非常に満足しています。

エル・ロジスティクス様、本日はありがとうございました!

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