目次
「在庫回転率とは何か?」
「在庫回転率を求めることで、何がわかるのか?」
こんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
在庫回転率とは、ある一定の期間のうちに何回在庫が入れ替わったのかを表す数値のこと。
在庫回転率を計算・分析することで在庫の動きや顧客ニーズを可視化でき、在庫回転率を上げると効率よく利益を上げられるため、あらゆる業種の倉庫や店舗で取り入れられています。
本記事では、在庫回転率を活用して事業の見直しや売上アップを目指したい方に向けて、在庫回転率の基礎知識・計算方法・業界別の適正値などをわかりやすく解説します。
在庫回転率に関する知識が身に付いて、事業の見直しに活かせるようになる情報が集約された記事なので、ぜひ最後までご覧ください。
まずは、在庫回転率を扱う上で前提として知っておきたい基礎知識について解説します。
・在庫回転率とは
・在庫回転率を把握する目的
・在庫回転率の計算方法
この先の内容を正しく理解するための入り口なので、しっかりチェックしていきましょう。
在庫回転率とは、一定期間のうちに在庫が何回入れ替わったのかを表す数値のことです。
今ある在庫の金額(個数)と、すでに販売された商品の金額(個数)を比較することで、在庫が一定期間中に何回入れ替わったのかを算出できます。
在庫は、将来お金に代わる可能性があるという意味では「資産」であると同時に、売れるまでは仕入れや保管に経費がかかる「負債」でもあります。
在庫回転率が高ければ高いほど、「商品の出入りの循環が上手く機能していて経営も好調」という指標になるのです。
在庫回転率を把握する目的は、「入出庫(商品の出入り)のスピードを適正値にすること」です。
在庫回転率は高ければ高いほど良いわけではなく、高すぎず低すぎない「適正値」を維持することで、最も効率よく商品の出入りが循環します。
在庫回転率を計算し、数値を平均と比較すれば、「自社にとって最も効率が良い入出庫のスパン」を把握できるのです。
さらに、在庫回転率を求めると、以下のようなメリットもあります。
・顧客のニーズを数値で把握できる
・在庫の動きを可視化できる
・過剰在庫や在庫の不足などのリスク回避
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
顧客がどの商品をどの時期に欲しいと感じているのか、在庫回転率を求めることで感覚ではなく数値で把握できるため、これまでの在庫の数や入荷のタイミングを見直すきっかけになります。
「在庫回転率の高い商品」すなわち「顧客が求める商品」を正しく把握するというのは、どの業界においても非常に重要なポイントです。
月に1度在庫回転率を求め、1年分のデータを集めると、その年の在庫の推移を年間を見ることができます。
これにより、
「4月に売り上げがピークに達する商品は、3月上旬から多めに仕入れておく」
「この商品は冬は売れ行きがいまいちだから、入荷を少なめにする」
といった判断が可能になります。
アパレルや食品など、季節によって売れやすい商品が変わる業界では特に、年間を通した在庫の動きを把握することが経営の鍵になります。
在庫回転率を把握することにより「この時期はこの商品が多めに売れる」といったおおまかな予測が立てられるようになり、在庫の過不足を未然に防ぎやすくなります。
需要と供給のバランスが崩れたときに発生しがちな
「無駄に在庫を抱えすぎてスペースが足りず、保管する倉庫の賃料がかかてしまった」
「注文を受けた商品の入荷が間に合わず利益を得るチャンスを失ってしまった」
といったトラブルを回避できるのです。
在庫回転率の計算方法には、以下の2種類があります。
1.金額で計算する方法
2.個数で計算する方法
それぞれの計算方法を詳しく解説していきます。
在庫回転率を金額で計算する場合の数式は、以下の通りです。
在庫回転率を計算する際には、上記のような金額ベースで求めるのが一般的です。
在庫回転率を個数で計算する場合の数式は、次の通りです。
在庫回転率の計算は、金額ベースが一般的ではあるものの、具体的な在庫数をイメージしたい場合はこちらの計算方法を使用します。
在庫回転率の計算方法を知ったところで、続いては具体的な数値を用いた在庫回転率の計算シミュレーションを行います。
計算シミュレーションに必要なのは、次の6ステップ。
STEP1.調査期間を決める
STEP2.期首棚卸高を求める
STEP3.調査終了後、期末棚卸高を求める
STEP4.仕入高を求める
STEP5. 売上原価を求める
STEP6. STEP2・4・5の金額を計算式に当てはめる
こちらのシミュレーションと同じ手順を踏めば、あなたの会社や店舗の在庫回転率を実際に求められるようになるので、ぜひ参考にしてください。
まずは、在庫回転率を求める期間を決めます。
週に1回など、あまり短い期間で調査すると正確なデータが取れないため、ある程度まとまった期間で調査を行いましょう。
おすすめなのは、月に一度在庫回転率を求め、そのまま調査を1年間行い「月間」と「年間」の在庫回転率を求めるという方法。
月間の在庫回転率は、今後の在庫の入荷予測に、年間の回転率は他社や業界の平均値と比較する際に活用できます。
※他社や業界の平均値を知る方法については、「4.在庫回転率の適正値」でお話しします。
調査期間が決まったら、期首棚卸高(調査を始める前の在庫の金額)を求めます。
在庫の棚卸を行い、商品の原価と個数をかけ合わせましょう。
単価1,000円の商品が100個在庫として保管されている上の図の場合、期首棚卸高は10万円となります。
1ヶ月が経過して調査が終わったら、期末棚卸高(調査終了後の在庫の金額)を求めます。
期首棚卸高を計算した時と同様に、在庫の棚卸を行って、商品の原価と個数をかけ合わせましょう。
単価1,000円の商品が50個残っていた場合、期末棚卸高は5万円となります。
続いて、商品の仕入高を求めます。
商品の原価と、仕入れた在庫の数をかけ合わせましょう。
売値1,000円だった商品の原価が800円だった場合、仕入れにかかった費用は8万円です。
次は、商品の売上原価を求めます。
これまで計算で出していった期首棚卸高・期末棚卸高・仕入高・そして売上原価には、以下のような関係があります。
上の図を見て分かる通り、「期首棚卸高+仕入高」が「期末棚卸高+売上原価」の金額がイコールになるため、売上原価は次の式で求められます。
「期首棚卸高+仕入れ高ー期末棚卸高」
こちらの式に、算出した金額を当てはめていきましょう。
上の例の場合、売上原価は13万円となります。
最後に、2章で紹介した在庫回転率の計算式に、これまで求めた数値を当てはめます。
こちらの例の場合は1ヶ月間の調査なので、在庫回転率は「1.73回転/月」で、1ヶ月に1,73回在庫が回転しているという計算になります。
こうした調査を毎月続け、1年分のデータが溜まると、「年間で在庫が最も回転しやすい時期はいつか」といったこともわかってきます。
自社の在庫回転率が良いのか悪いのかを判断するためには、基準となる適正値を把握することが必要です。
ここからは在庫回転率の適正値を把握するために必要な
・【業種別】在庫回転率の平均値
・在庫回転率の適正値を知る方法
を順番に紹介します。
適正な在庫回転率は業種によって大きく異なるため、まずは業種別の在庫回転率の平均値を見ていきましょう。
以下の表は、中小企業庁が2022年に発表した「令和3年中小企業実態基本調査」のデータを元に算出した、業種別在庫回転率の平均値です。
自分の業界の平均値を見て、数値が大幅に高い・低いということがあれば、早急に在庫回転率の見直しを行った方が良いでしょう。
在庫回転率の適正値を求めるには、「目標とする企業やライバル企業の在庫回転率を調べる」という方法が最も有効です。
自分の業種の在庫回転率の平均値がわかったところで、その数値があなたの会社が目指すべき適正値とは限りません。
他社の在庫回転率を調べるには、インターネット上等で公開されている決算書の
・売上高
・棚卸資産
を確認します。
売上高を棚卸資産の金額で割ることで、おおよその在庫回転率を求められます。
記事の前半で紹介したような「売上原価÷平均在庫金額」という数式に当てはめた方が正確な回転率を求められますが、他社から得られる情報は限られているため、こちらの数式に当てはめます。
ここからは、在庫回転率をアップさせたいと考えている方に向けて、回転率アップに繋がる5つのポイントを紹介します。
1.⽬標の在庫回転率を設定する
2.在庫回転率は定期的にチェックする
3.ロケーション管理を最適化する
4.販売価格を見直しする
5.リードタイムを短縮する
どれも効率よく在庫回転率を向上させるために欠かせないポイントなので、しっかりとチェックしましょう。
在庫回転率をアップさせようと思ったら、まずは目標となる在庫回転率を設定しましょう。
「4.在庫回転率の適正値」でもお話しした通り、目標値は以下のように設定することができます。
・理想的な経営をしている企業やライバル企業の決算書から在庫回転率を算出し、それに追いつくことを目標にする
・競合他社が決算書を公開していない場合は、同業種の平均的な在庫回転率を超えることを目標にする
具体的な目標を掲げることで、自社の目指すべき方向が明確になり、従業員のモチベーションアップにも繋がります。
在庫回転率の調査は年間を通して行うのが一般的ですが、月1回や週1回など、定期的に回転率を算出しておくことをおすすめします。
年間の在庫回転率とは別に、月ごと、時間的余裕があれば週ごとの在庫回転率も出しておきましょう。
1年のデータをまとめて取るよりも在庫管理の課題がより浮き彫りになるため、アパレルや食品など、季節によって取り扱う商品が大きく変わる事業では特に重要なポイントとなります。
在庫回転率を上げるためには、棚や収納場所に番号を振り、社内の在庫がどの場所にあるかをすべて表管理する「ロケーション管理」を行うことも重要です。
どこに何が置いてあるかわからないような雑然とした社内で日々の業務を行っていると、優先して売るべき商品の存在に気づかず不良在庫になってしまう等のトラブルが発生し、在庫回転率は低くなっていきます。
以下の3種のロケーション管理方法から現場に合ったものを選び、在庫の整理をしましょう。
在庫回転率が悪いと感じた場合、行うべきなのは販売価格の見直しです。
具体的な目標を設定して管理方法を改善したとしても、そもそもの価格設定が誤っていては商品は売れず、在庫の回転は滞ってしまいます。
次のような方法で、動きの悪い在庫を出さない工夫をしてみましょう。
商品を発注してから顧客の手元に届くまでにかかる時間を指す「リードタイム」を短縮するのも、在庫回転率を上げるポイントの一つです。
「リードタイムが短い」というのは、顧客満足度を高めるうえで、価格設定と同様にとても重要な要素です。
リードタイムを短縮させることで顧客から信頼・評価され、商品の売上がアップし、結果的に在庫回転率の向上に繋がります。
受注から配送までの業務の流れを見直し、以下のような方法でリードタイムの短縮を図りましょう。
【リードタイム短縮のアイデア】
・従業員の増員
・在庫管理システム※による機械化・自動化
在庫管理システムについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
在庫回転率の向上に有効なリードタイムの短縮ですが、人員の増加や新たなシステムを導入するにはコストがかかるため、なかなか実現できないという場合もあるでしょう。
そんな時に試していただきたいのが、「外部倉庫を利用したリードタイムの短縮」 です。
ここからは
・外部倉庫の利用がリードタイムの短縮に繋がる理由
・外部倉庫を探すなら倉庫利用サービスの「WareX」
について説明していきます。
外部倉庫がリードタイムの短縮に繋がるのは、拠点を点在させることで輸送時間を大幅にカットできるためです。
外部倉庫を借りて複数の拠点を持つことで注文を受けた最寄りの拠点から商品を輸送できるようになり、自社倉庫から全国へ輸送した場合と比べてリードタイムが短縮されるのです。
リードタイムを短縮することで顧客から「スピーディーに商品を届けてくれる、信頼のおける企業」として信頼され、商品の売上アップと在庫回転率の向上にも繋がります。
在庫回転率のアップのために外部倉庫を利用しようと思っても
「そもそもマッチする外部倉庫を探すのが大変」
「倉庫探しに時間や労力を割けない」
と考える方は多いのではないでしょうか。
そんな問題を解消するのが、倉庫利用サービスの「WareX」です。
「WareX」とは、全国の倉庫を手軽に検索・利用できるサービスです。
サイト内に登録された安全な全国の倉庫を一括検索して、その場で
・料金の比較
・実際に利用した場合の料金シミュレーション
・一括問い合わせ
ができるため、自力で一から倉庫探しをするよりもスピーディーに条件に合った倉庫を見つけることができます。
「最小限の手間で希望に合う外部倉庫を借りて、輸送の効率化と在庫回転率のアップを図りたい」という場合は、ぜひ「WareX」をご活用ください。
最後に、本記事でお話した内容のポイントをおさらいしましょう。
在庫回転率とは:一定期間のうちに在庫が何回入れ替わったのかを表す数値のこと
在庫回転率を把握する目的:自社の在庫の推移を時期ごとに把握して、経営の改善に役立てること
在庫回転率を金額で計算する方法:売上原価÷平均在庫金額
在庫回転率を個数で計算する方法:総出庫数÷平均在庫数
→金額で計算するのが一般的。具体的な在庫の出入りのイメージを浮かべたい場合は個数で計算
STEP1.調査期間を決める
STEP2.期首棚卸高を求める
STEP3.調査終了後、期末棚卸高を求める
STEP4.仕入高を求める
STEP5. 売上原価を求める
STEP6. STEP2・4・5の金額を計算式に当てはめる
在庫回転率の値は業種によって異なるため、まずは自社と同じ業種の平均的値をチェックして「在庫回転率の目安」を知る
→そのうえで目標とする企業やライバル企業の在庫回転率を調べることで、適正値がわかる
他社のおおよその在庫回転率を求める計算式:売上高÷棚卸資産
→一般公開されている決算書等のデータから求めることができる
1.⽬標の在庫回転率を設定する
2.在庫回転率は定期的にチェックする
3.ロケーション管理を最適化する
4.販売価格を見直しする
5.リードタイムを短縮する
→「回転率の数値を上げること」ではなく、「売れる商品が効率よく循環する仕組みづくり」に注目する
外部倉庫の利用がリードタイムの短縮に繋がる理由:複数拠点を持つことで、注文を受けた場所から最寄りの倉庫からの商品発送が可能になる
→全国から希望に合った倉庫が探せる倉庫利用サービス「WareX」で、リードタイムの短縮を
>>「WareX」サービス内容紹介ページ
本記事の内容を参考に在庫回転率を上げ、あなたの会社の利益アップに繋がることを願っています。