物流需要が増大し続けるなかで、ITを活用して人々の生活を便利にする「MaaS」という考え方が注目され始めています。しかし「MaaS」とはどのようなものを指すのか、どのように導入を進めていけばよいのかわからないという方も多いのはないでしょうか。
そこで今回は物流におけるMaaSの考え方や目指している姿、具体的な事例などについてご紹介します。
MaaSとは「Mobility as a Service」の頭文字をとった言葉で、「IT技術を使って公共交通機関同士をシームレスに連携し、人々が便利かつ効率的に利用できるようにする仕組み」のことです。
交通機関には電車やバス、タクシー、シェアサイクル、ライドシェアなど多種多様な手段が含まれており、あらゆる手段がMaaSの対象となります。
例えばインターネットやスマートフォンが普及した現代において、乗り換え情報を検索するWebサービスやアプリは当たり前の存在になりました。自宅から目的地に効率よくたどり着ける経路を検索しそれにならって移動することで、利用者は到着までの移動時間を短縮できます。
MaaSが実現されると、この経路検索機能のみならず、経路情報に表示された交通機関を予約したり利用料金を決済したりといったことができるようになります。
現在、MaaSは専用アプリによる提供が主流となっています。目的地に到着するための複数の経路のなかから利用者が任意のものを選択し、予約や決済を行うという流れが一般的です。
日本でも少しずつ施策が広がってきていますが、MaaSが特に進んでいるヨーロッパでは、定額制で自由に交通機関を利用できるサービスなども登場しています。
物流業界においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少に伴い、労働力不足が深刻化しています。
EC市場の発展ににより物流需要は年々高まっていますが、物流業界の就業者数は昔から大きく変化していません。つまり物流需要が高まるとともに一人あたりの負担が大きくなっているのが現状であり、長時間労働などの労働環境の悪化を招く原因にもなっています。
今後はさらに少子高齢化が進行し、ますます労働力不足は深刻になっていくとみられています。
労働力不足を解消するためには、MaaSを実現するとともに物流ロボットや倉庫管理システムをはじめとしたIT技術の活用によって業務効率化をはかることも大切です。労働力不足であっても物流需要を満たしながら、物流に従事する人々の負担を軽減していくための環境を構築する必要があるといえるでしょう。
物流業界の課題については下記でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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物流MaaSとは、ITを活用して物流の自動化を促進し、さまざまな物流課題を解決して最適な物流を実現する考え方のことです。
ここでは、物流MaaSが目指す姿と具体例を、幹線輸送面、物流結節点、支線配送面の3つの観点からご紹介します
幹線輸送面では、輸送車両の大型化と自動化を実現することにより、トラック1台(運転手1名)あたりの輸送量を現状より大幅に増大させることが目標とされています。
加えて、求貨・求車システムの整備によって実車率(トラックの全走行距離のなかで、貨物を積み込んだ状態で走行した距離の割合のこと)を向上させることも期待されています。
現在、大手運送業者では1台で2台分の貨物輸送を可能にする「ダブル連結トラック」を一部エリアで導入しており、輸送効率を向上させる取り組みを行っています。隊列走行による業務効率化においても、実務を見据えて複数の事業者が共同で実証実験を行っている段階です。
さらに求貨・求車システムの整備については、運送事業者が活用しきれないトラックなどを有効活用して輸送能力を最大化することを目的とし、幹線輸送において荷主企業と運送事業者をマッチングさせるサービスが提供され始めています。
物流結節点においては、物流情報とインフラ情報を連携させて、シームレスに貨物を積み替えられる物流を構築することが目標となります。
この目標を実現するためには、荷役自動化や共同輸送の普及、パレット・梱包資材の標準化、バース(貨物を積み下ろしするスペース)予約の浸透などが必要です。
国内では、トラックドライバーをはじめとした運転手がスマートフォンから事前にバースの予約を行えるサービスを提供する事業者が登場しています。現状では貨物を運んだ先の倉庫で荷下ろしのためのスペースがなく、作業が可能になるまでの待機時間が発生しやすい状況にありますが、バース予約が普及すればドライバーの待機時間を削減できるでしょう。
加えて、共同輸送を進めていく動きも活発化しています。輸送側の企業だけでなく荷主も一丸となって共同輸送を推し進めることで、物流業界全体が輸送を効率化する新たな輸送スキームを構築しようとしています。
さらに、物流業界ではパレットや資材の規格を統一することによって物流の効率化をはかる取り組みも進められています。
輸送元と輸送先のパレットの規格が異なっていると、輸送先のパレットの規格に合わせて何度も荷物を積み替えなければならず、余計な手間が発生します。各事業者があらかじめ統一されたパレットを使用していれば、パレットの規格が変わるたびに荷物を積み替える必要がなくなり、作業の効率化がはかれます。
元々標準規格は定められていましたが、これまでは遵守する事業者が限られていたこともあり、規格の統一化の動きが進むことによって業界全体の生産性の向上が期待できるでしょう。
支線配送面に関しては、電動車両の導入を進めることが目標となります。
電動車両の普及が進むことによって、将来的に今以上に労働人口が減少するといわれている国内物流の労働力不足が緩和されると同時に、ドライバーの負担軽減による労働環境の改善につながるでしょう。
本格的な商用化には至っていませんが、物流業界の各事業者は電動トラックの実験的な投入を試みています。政府も電動化対応トラックの導入に対して助成金を支給するなど、電動車両の導入普及に向けた取り組みを積極的に行っています。
例えば国内の大手コンビニは、商用車としては初めてとなるチルドと米飯の両方に対応した「2室2温度帯のEVトラック」を試験的に導入しました。急速充電が可能なEVトラックであり、より実用的な運用スキームの構築が進められています。
国内外の物流MaaS事例として、代表的な2つをご紹介します。
フィジカルインターネットは、「複数の設備や手段を共有し、場面に合わせて最適なルートで運ぶ」という新しい輸配送の考え方です。
「ハブアンドスポーク」と呼ばれる従来型の考え方では、自社が独自の物流拠点(ハブ)を構築し、その物流拠点を中継地点として目的地に荷物を運んでいました。しかし一度拠点となるハブに荷物を集約してから目的地に運ぶ必要があるため、ハブアンドスポークでは移動距離が長くなりやすいというデメリットがあったといえます。
一方でフィジカルインターネットでは必ずしも物流拠点に荷物を集約する必要はなく、インターネットを活用してその時点で最も効率的な配送手段やルートを導き出し、状況に応じて柔軟な輸配送を行います。
フィジカルインターネットの考え方では自社が所有する設備だけでなく、提携している他社の車両や、物流企業とは無関係な一般消費者の車両なども活用するのが特徴的です。ネットワークをメッシュで捉えて、最短距離での輸配送を可能にします。
労働環境改善の一環として、ドライバーにやさしい車づくりも進められています。
具体的には、輸送車両にドライブレコーダーなどのデータ収集が可能なIT機器が搭載され、事業者が車両データや映像データを分析してリアルタイムに安全運行管理を実施するシステムの開発・実証が行われています。
さらに体格の小さなドライバーや女性でも働きやすい環境を実現するために、ドライバーにやさしい車両の開発においても着手され、環境改善への取り組みが進んでいます。
MaaSの考え方を把握しても、すぐに導入に踏み切ることは難しいかもしれません。
MaaSを導入するのであれば、倉庫シェアリングサービスを活用してプロに倉庫運用を任せるのも手段のひとつです。
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