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商品を保管したいとき、倉庫を利用する必要がありますが、賃貸と寄託、2つの選択肢があります。この記事では、倉庫を使ってみたいけど、利用方法が分からない!といった方向けに、2つの契約形態のメリット、デメリットについて解説します。
賃貸契約は、従来からある倉庫の借り方です。倉庫を利用するときに、まず検討するのが、賃貸契約でしょう。
賃貸契約は、スペースを借りる契約です。
倉庫の面積は、日本では「坪」という単位で表しますが、決まったスペースを「月坪いくら」、という月額で契約することになります。毎月決まった料金(固定料金)で使用できるので、スペースを占有して利用ができ、コスト予測しやすいのがメリットです。
例えば、月坪5,000円の倉庫を400坪借りた時、月額の賃料は5,000円/坪×400坪=200万円になります。一般的に賃貸の契約期間は、数百坪の小スペースであれば半年から数年、数千坪のスペースになると5年のように長期の契約を求められるため、一定期間、定められた賃料を支払い続ける必要があります。
以下の例は、月坪単価5,000円のスペースを1坪だけ、3ヶ月間借りた場合の保管料のイメージです。
賃貸倉庫を見つける際には、宅地建物取引業法に基づき、仲介業者に選定から契約までの業務を依頼するのが一般的で、仲介手数料が必要になります。賃貸契約を締結するまでは、倉庫スペックの詳細確認、賃貸条件の交渉、契約手続き、作業準備などで、利用開始までに長めのリードタイムがかかります。
料金相場はエリアによって異なります。地価を反映して首都圏、関西圏等の大都市圏が高く、地方都市は安めです。特に首都圏の都心に近い湾岸エリアは、料金が高く設定されています。
賃貸契約は、スペースだけを借りる形なので、庫内作業や作業員は基本的に借主が手配します。専用のスペースで、梱包作業やシール貼りなどの専属物流加工が必要な場合に、フレキシブルな対応ができるのも、賃貸契約のメリットです。
庫内作業を委託できる良い会社が見つかれば、高い品質で庫内作業を行えるので、オペレーションが強い会社にはメリットがあります。一方で、庫内作業の品質が安定するまでには改善プロセスを繰り返すことになります。
作業員の確保には、社員やパートタイムでの契約や、作業派遣の場合には人日ベースの契約が一般的です。繁忙期には作業員の確保が困難になったり、荷量が少ない場合でも、一定の固定費が発生するのがデメリットと言えるでしょう。
寄託契約は、荷物を預けることで料金が発生する契約形態です。
寄託契約を請け負えるのは、倉庫業法上の営業倉庫のみです。営業倉庫は登録制となっており、国土交通省傘下の各エリア運輸局への登録を経て初めて、他社の荷物を預かることができます。
倉庫業法は、荷物を預ける人 (荷主と言います) の利益を守るために制定された法律で、営業倉庫は他人の荷物を預かるため、倉庫設備や品質管理に関する厳しい基準をクリアしています。そのため、安心して荷物を預けることができます。
営業倉庫と自家倉庫の違いについては、こちらの記事もご覧ください。
「営業倉庫」とは?自家倉庫との違いやその種類までご紹介!
寄託契約は、一般的に荷物を預けている間だけ保管料が発生します。賃貸のようにスペースを占有する契約も可能ですが、基本的には月坪単価に対し、利用したスペースが保管料として請求されたり、パレットや箱などの荷姿ごとに単価が設定されていることもあります。一般的なのは、3期制で、1か月を「1日~10日」「11日~20日」「21日~末日」の3期間に分けて保管料を計算します。これはまた将来、WareXのコラムで説明します!
近年、アメリカや欧州などでは、更に柔軟な保管料設計である、1日あたり1パレットあたりいくら、という日建てパレット建ての料金形態が一般的になってきています。
賃貸(月坪)での契約に慣れている場合、寄託との料金比較は少し難しいかもしれません。
例えば、保管料が42円/パレット・日の場合、月坪換算の保管費用はいくらになるのでしょうか。日本に最も普及している11型(いちいちがた)パレットで試算してみましょう。
細かな計算方法は倉庫によりまちまちですが、11型パレットはフォークリフトなどの通路も考えると1坪に2枚置ける前提で計算することが多いようです。パレットは最大で3段まで積むことができますが、余裕をもって1坪に置けるパレット数は通常2~4枚と考えるのが良いでしょう。
例として、保管料が42円/パレット・日、1坪に置けるパレット数が4枚の荷物を保管する場合、これを月坪に換算すると
42円×4パレット×30日=約5,000円/坪・月
となります。(あくまで目安ですので、段積みできるパレット数やパレットサイズで計算式は変わります。)
変動型の寄託契約は、保管する荷物の数量に応じて、日次で精算します。そのため、毎月5,000円が丸々請求されるわけでありません。
例えば、保管料が42円/パレット・日の倉庫に、
1ヶ月目:2パレット
2ヶ月目:4パレット
3ヶ月目:1パレット
を預けた場合、以下のように月の請求額の平均は約3,000円となります。
これに対して、月坪単価5,000円のスペースを1坪だけ、3ヶ月間借りた場合の保管料は、本記事の冒頭でご覧いただいた通り、15,000円です。日建てパレット建ての変動料金にすることで、保管料を節約できる可能性があることが分かります。
このように、寄託契約を活用すると、物流の固定費を変動費に変えられる可能性があります。荷物ごとの採算性が見積もりやすく、仲介手数料も必要ないため、気軽に始めやすいのも良いところです。
入出庫作業を委託できる点も寄託契約のメリットです。営業倉庫は作業品質が安定しており、安心して荷物を預けることができます。
注意点として、寄託契約では入荷、出荷についてもそれぞれ作業費がかかるため、採算性を見積もる場合には、入出荷費用を考慮する必要があります。倉庫への輸配送は荷主側で手配するのが通常です。
入出荷作業を委託できる一方で、物流加工など柔軟な庫内作業の対応には注意が必要です。流通加工の経験がある倉庫会社の選定が必要だったり、預けたい商品の取扱いに慣れている倉庫会社を探す必要があります。まず最初は、パレットイン、パレットアウトなど、庫内作業が少ない荷物からトライするのが良いかもしれません。
WareXは、1パレットからでも気軽に使える倉庫サービスを目指しているため、寄託契約を基本としています。これまでのWareXの経験から、寄託契約は、次のような事業者様に向いているようです。
D2C市場、EC市場が拡大する中で、新しい商品が大ヒットするのはよくあることです。
事業規模がまだそれほど大きくない場合、今後どれだけ売れるか分からない商品のために、広い倉庫スペースを長期間の賃貸契約で借りるのはリスクを伴います。
こういった、採算性と荷量のバランスを取る必要がある状況で、倉庫費用を変動費にできる寄託契約の活用は効果的です。
寄託契約は、食品など、時期によって在庫量が大きく変動する商品にも向いています。酒類や、需要に季節性がある加工食品は、販売量に波がある一方で、工場の生産量はあまり変化がありません。溢れた荷物を一時保管するうえで、バッファー倉庫として寄託契約を活用するのは有効な物流戦略と言えるでしょう。
オフィス移転や店舗の改装など、急に短期間荷物を預ける状況でも、利用開始までの期間が短い寄託契約の活用は有効です。参考データとして、WareXでは、アカウント作成から、最短3営業日で荷物をお預けいただいています。
この記事では、賃貸契約と寄託契約の違いと、その特徴について説明しました。
賃貸は倉庫フロアを借りる契約形態、寄託は倉庫に荷物を預ける契約形態で、同じ倉庫利用でも、アパート賃貸とホテル宿泊くらい大きな差があります。
寄託契約は、これまで固定費だった倉庫費用を変動費に変えられる、柔軟性の高い契約形態です。物流戦略の選択肢の一つとして、寄託契約を検討してみてはいかがでしょうか。
WareXにアカウントを作ると、荷物の保管料と入出荷作業料を確認して、倉庫に空きスペースの確認依頼を送ることができます。倉庫利用のご経験があまりない場合でも、アカウント作成から倉庫への引き合い送信まで、丁寧にサポートしています。
WareXサービスサイト:https://warex.ai/