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【セミナーレポート:第一部】物流DXの指針はここにある!新・物流施策大綱を知る(国交相セクション)

# レポート
# 総合物流施策大綱
2021-10-01
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セミナーの概要

本連載では、2021年9月9日に開催された「物流DXの指針はここにある!総合物流施策大綱を知る」について3回レポート形式でレポートします。

第1回目:【セミナーレポート】総合物流施策大綱セミナー(国交省セクション)
第2回目:【セミナーレポート】総合物流施策大綱セミナー(野村総合研究所セクション)
第3回目:【セミナーレポート】総合物流施策大綱セミナー(Q&Aセクション)

総合物流施策大綱が今後5年間(2025年まで)の物流業界の方向性を定めていることもあり、登録者数が1,300名を超えるなど、大盛況のセミナーとなりました。

第1回目では、「総合物流施策大綱の概要やポイント、鮮明化している物流課題への対策などについて」国土交通省物流政策課課長 高田様にお話しいただいた内容をご紹介します。

国土交通省 高田様:早速ですが、総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)について、お話しさせていただきます。

本日は色々と物流事業者様、荷主様さまざまな方がご参加いただいていると伺っています。本日は物流を取り巻く現状を総合物流施策大綱を通じてお伝えできればと考えています。本日お話しさせていただくセミナーの概要は以下の通りです。

セミナーの概要

  1. 新型コロナウイルス感染症が物流に与える影響
  2. 総合物流施策大綱の策定に至った経緯・背景
  3. 総合物流施策大綱のポイント
  • 簡素で滑らかな物流
  • 担い手にやさしい物流
  • 強くてしなやかな物流

新型コロナウイルス感染症が物流に与える影響

新型コロナウイルスの影響を受けて2020年春先は低調な荷動きとなったものの、本年は回復傾向が見られており、2021年4月~6月を抜き出してみてみると、輸出入は前年対比で伸びています。コンテナの確保が大変ということも話題となっています。

個人の物流に限ると需要が増加しており、2020年に緊急事態宣言が発令されて以降、前年比10%以上もの伸びを見せている状況にあります。加えて宅配便の取り扱い個数も毎年伸び続けており、2020年には前年比+11.6%となる約48億4,000万個を記録したと報告されています。
このように、社会情勢の影響で個人の物流需要は伸び続けていることがわかります。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年にトラックドライバーが不足していると回答した企業の割合は減少したものの、不足している状況は変わっていません。

保管残高、入出庫料の減少傾向は継続しているが回復の動きも

新型コロナウイルス感染症が倉庫業に与える影響として、コロナ前の2019年と比較して、2020年6〜7月頃から保管残高の減少傾向が続いています。入出庫料も2019年比較で減少傾向が続いていますが、こちらは減少幅が小さくなってきています。

このように物流業界全体の需要は好調であるといえますが、一部の事業者は新型コロナウイルスの影響によって保管残高、入出庫量の減少幅が継続しており、資金繰りが厳しい状況に置かれています。

総合物流施策大綱の策定に至った経緯・背景

こうした中で、今年の6月15日に閣議決定された総合物流施策大綱の策定経緯について解説がありました。

総合物流施策大綱の歴史的経緯

総合物流施策大綱は、平成9年から4年ないしは5年ごとに政府が一体となって物流環境を整えるための政策の一環として制定されているものです。

直近2017年から2020年は、「強い物流」を作るために「繋がる」から「育てる」まで「物流におけるさまざまな課題に対応する」という内容でした。前回の大綱が例外的に4年間になったのは、同じく国土交通省で策定する「交通政策基本計画」、「社会資本整備総合計画」と始まりの年度を合わせるためです。

今回の新しい大綱では、2020年の7月から半年にわたって検討会が開催されました。検討会で行われた内容に基づいた提言を受けて、2021年6月15日に総合物流施策大綱が閣議決定されたものです。

新しい総合物流施策大綱の特徴

今回新たに閣議決定された総合物流施策大綱の特徴として、以下の3つが挙げられます。

1つ目は「数値目標の設定」です。
総合物流施策大綱では、政策の達成状況を客観的に検証するためにKPIの指標を設定し、成果を定量的に把握して常に進捗を管理できるようにしています。

2つ目のポイントは物流施策を総合的に推進するために、「経済産業省や農林水産省とより強力な連携」を行っている点です。

3つ目は、検討メンバーを見ても分かるように、「産官学一体となった推進体制を構築」していることです。大綱を作るだけで終わるのではなく、施策がどのように進んでいくか、政策評価を行いながら定期的に進捗管理しながら進めていく予定です。

物流DXへの取り組みと標準化の重要性

さらに、物流DXへの取り組みとして、「物流分野の機械化」、「物流のデジタル化」を進め、これまでの物流のあり方を変えたいというお話がありました。具体的には以下が候補となりますが、物流DXを進める前提として、標準化の重要性への言及もありました。

物流分野の機械化

  • 幹線輸送の自動化・機械化
  • ラストワンマイル輸送の効率化
  • 庫内作業の自動化・機械化

物流のデジタル化

  • 手続きの電子化
  • 点呼や配車管理のデジタル化
  • 荷物とトラック・倉庫のマッチングシステム
  • トラック予約システム
  • SIPスマート物流(物流・商流データ基盤)やサイバーポートの構築
  • AIの活用

総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)のポイント

生産年齢人口の減少など社会を取り巻く環境、EC市場の急成長、物流に対する社会的価値の再認識などとあいまって、物流業界ではさまざまな課題が鮮明化しています。これらを踏まえて、今回の大綱は3つの柱が掲げられています。

簡素でなめらかな物流

「簡素でなめらかな物流」を実現するために、物流DXと物流標準化の推進によってサプライチェーン全体の最適化をはかる必要があります。

主なKPIとしては、以下を掲げています。

  • 物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けた取り組みに着手している物流事業者の割合 => 2025年度に100%
  • 物流業務の自動化・機械化やデジタル化により、物流DXを実現している物流事業者の割合 => 2025年度に70%
  • 物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けて、荷主と連携した取り組みを行っている物流事業者の割合 => 2025年度に50%

スマート物流サービスの開発を進めて社会に浸透させ、加えて物流DXにおいてはデジタル機器の導入によってサプライチェーン全体の効率化、デジタル化を推し進めたいと思っています。物流事業者と荷主が一体となった取り組みが重要です。

既に加工食品分野では推進されていますが、会社ごと、業界ごとの枠組みを超えて、共同化、自動化、データ化への取り組みと標準化を行う必要があります。

担い手に優しい物流

2024年4月1日より、自動車運送事業の時間外労働の上限が年間960時間となります。国交省としては、こうした新たな規制により、トラックドライバーの働き方改革を進めたいと考えています。国民運動や商慣習の見直しにより、労働生産性の向上、多様な人材の確保・育成、取引環境の適正化を図る予定です。

トラックドライバーだけでなく、船員も不足している現状があります。労務管理体制の見直しや船舶管理業の登録制度を創設により、船員1人・1時間あたりの輸送量を向こう数年で2割程度伸ばしていきたいと考えています。

さらには共同輸配送のさらなる展開、貨客混載、倉庫シェアリング、置き配等による再配達の削減、ラストワンマイル輸送の円滑化といった取り組みを行っています。農林水産物、食品等については共同物流拠点の取り組みを進める予定です。

過疎地域におけるラストワンマイル配送では、買い物難民、在宅医療ニーズを踏まえ、過疎地・離島物流、医薬品物流、農作物物流というテーマのもと、ドローン実装の社会実験を進めており、今年6月にガイドラインVer.2.0を策定したところです。
参考:物流分野におけるドローンの活用(国土交通省)

強くてしなやかな物流

3つ目のポイントとして、今後は感染症や大規模災害などが発生した場合でも、持続可能な物流ネットワークを構築していく必要があります。これを実現するためは、「ヒトを支援するAIターミナル」や「スマート貨物ターミナル」、ドライバーアプリの導入、隊列走行を見据えた道路の整備、コンテナ戦略港湾の推進などを行っていく必要があるでしょう。

国内だけでなく、国際競争力の強化に向けた物流ネットワークを構築したいと考えています。具体的には、コンテナ戦略港湾の推進や、「2030年までに5兆円を目指して農水産品の輸出を拡大する」という方針に沿って、コールドチェーンの整備と国際基準の作成も進めていかなければなりません。

さらには地球環境の持続可能性を確保するための物理ネットワークの構築も重要であり、「カーボンニュートラル」を意識した取り組みとして、政府は2030年までに13年と比べて46%温室効果ガスを削減する高い目標を掲げています。
物流業界の施策としては、モーダルシフトの推進や、港湾機能の高度化によるカーボンニュートラルポートの形成などが考えられます。
国交省、環境省では、自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業を進めています。事業スキーム次第で1/2の補助があるので、積極的に活用していただければと思います。
参考:令和3年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金

まとめ

前半のパートでは、国土交通省物流政策課課長 高田様から、今年6月に閣議決定された新しい総合物流施策大綱について解説いただきました。

これまでと比べて、今回の総合物流施策大綱は、以下の3つが特徴的な内容となっています。

  • 数値目標(KPI)の設定
  • 経済産業省や農林水産省との強力な連携
  • 産官学一体となった推進体制

また、新しい総合物流施策大綱の具体的な内容について、ポイントは大きく以下の3点となっています。

  • 簡素でなめらかな物流
  • 担い手に優しい物流
  • 強くてしなやかな物流

詳細は、国土交通省のサイトをご覧ください。
参考:総合物流施策大綱

次のセッションでは、野村総合研究所 藤野様より近年注目を集めている「フィジカルインターネット」についてご講演いただきます。


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