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近年、サプライチェーンが注目され、物流のすべてのプロセスを包括的に管理することが求められるようになってきています。しかし、サプライチェーンとはどのような意味を持つのかよく分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、サプライチェーンにおいて倉庫が重要な理由や、最近の倉庫運営について解説します。
サプライチェーンとは、「商品を製造してから販売されるまでの一連の流れ」を表す言葉です。
一般的に、商品が生産されるまでの流れは「原材料を生産している企業→原材料を部品に加工する企業→商品を生産するメーカー」の順序となります。
その後、商品の生産が完了すると倉庫に送られ、入庫作業を経て一定期間倉庫で保管された後、必要に応じて組み立てを行ってから顧客の注文によって出荷・配送されます。この「スタート(製造)からゴール(販売)」までの一連のプロセスがサプライチェーンです。
原材料がなければ部品を作ることはできず、部品がなければ商品が完成することもありません。このように、順序だてて商品が作られ、販売ルートに乗せられるまでの供給連鎖とも表現できるでしょう。
商品を販売するうえで、サプライチェーンの最適化は非常に重要です。ここでは、サプライチェーンが重要である理由について解説します。
倉庫に保管されている在庫は、今後売上に変わる可能性がある資産です。
しかし、在庫を抱えすぎると現金化を待つ間のキャッシュフローを十分に確保することが難しくなり、新規事業やマーケティング戦略などに投資できるリソースが減少します。
とはいえ在庫が少なすぎると需要に対して販売できる商品が追いつかず、機会損失が発生する原因となります。
サプライチェーンを適切に管理することで、需要と供給に基づいて適正在庫を維持し、過剰在庫や機会損失を防止できます。
サプライチェーンを適切に把握していれば、需要が急に変動した際にもスムーズに運用を調整し、対応することができます。
常に余裕のない運用を行っていると急激な需要の変化に対応しきれず配送遅延や誤配送などのトラブルを引き起こす可能性もあるので、注意が必要です。
サプライチェーンを最適化することで、一つひとつのプロセスが効率化されて物流コストを削減できます。全体を把握したうえで無駄が生じている作業の見直しを行うことが、コストの圧縮につながります。
最近では、サプライチェーンを管理する「サプライチェーン・マネジメント」が重要視されています。サプライチェーン・マネジメントとはどのような考え方なのか、概要とメリット・デメリットについて解説します。
サプライチェーンマネジメントはSCMとも呼ばれており、「物流を最適化し、業務改善を実現するためのマネジメント」を指します。
仕入れや在庫管理は複数の業者と取り引きを行うケースが多いことから、現場の判断に任せきりになり非効率な運用になっている事例が多々あります。そのような非効率を正すために本部が物流の状況をまとめて管理・把握し、統制を取るのがSCMの目的です。
原料の仕入れや工場の生産工程、出荷、配送、店舗での販売など、流通のすべてのプロセスを一元管理して本部が把握し、効率化することを目指しています。
サプライチェーン・マネジメントを徹底することで、流通のそれぞれのプロセスに要するリードタイムを把握できるようになります。それにより全体を把握して一つひとつのプロセスの効率化をはかり、リードタイムの短縮を実現しやすくなるというメリットがあります。
加えて、流通におけるあらゆる情報を一括で管理できることから、売上状況を把握して目標の見通しを立てやすい点もメリットとして挙げられるでしょう。
一方で、全工程を把握するためのシステム整備にかかるコスト負担の問題や、効率化を重視するあまりに事業展開の可能性を狭めてしまいかねないというデメリットもあります。
サプライチェーンにおいて、倉庫運用は非常に重要な役割を持っています。ここでは、倉庫の主な役割や機能について解説します。
倉庫はサプライチェーンの要ともいわれる存在であり、製造が完了した配送前の商品を保管する機能のほかに、入出庫や流通加工、出荷・配送、在庫管理などあらゆる物流業務の拠点となります。
倉庫運用の最適化はスムーズなサプライチェーン・マネジメントには欠かせない要素であり、企業にとって倉庫は重要な物流基盤です。
サプライチェーン・マネジメントが重要視される物流現場においては、倉庫のデジタル化が求められつつあります。ここでは、倉庫業界の課題やデジタル化、新たに浸透しつつあるシェアリング倉庫などについて解説します。
倉庫業界においては、物流需要の増加や労働力不足による物流コストの増大や人件費の高騰、労働者一人ひとりの負担増が喫緊の課題となっています。EC市場の発展に伴い、物流需要は増加の一途をたどる一方で、物流業界に従事する人の数はそれほど増えていないのが現状です。
少子高齢化に伴って労働人口は減少し、今後さらに安定的な労働力の確保は難しくなっていくでしょう。人手不足によって物流業界は長時間労働が発生しやすい傾向にあり、労働環境の是正も業界全体の重要な課題であるといえます。
物流需要の増加や労働力不足の解消に対応するために、近年では倉庫のデジタル化が少しずつ進められています。倉庫管理システムの導入やマテハン機器の活用により人の手で処理しなければならない作業をできる限り削減することで、労働力不足を補おうという考え方です。
輸配送管理システムの活用による複数社での共同配送などを実施している企業もあり、限られたリソースを効率的に活用する土壌が整えられ始めています。
最近では、荷主が倉庫を必要とするタイミングで最適なロケーションやサイズ感の倉庫とマッチングし、倉庫をスポットもしくは継続利用できる「シェアリング倉庫」が登場しています。
保管する商品の種類やサイズ、数量、配送予定先などさまざまな条件によって最も適した倉庫は異なるため、常に固定されたロケーションを利用していると非効率なサプライチェーンになりがちです。
しかし、シェアリング倉庫ならその時の状況に応じて最適な倉庫を利用することが可能になります。
倉庫運用のプロセスは多岐に渡るため、従来のアナログな倉庫運用ではサプライチェーンの全体像を正確に把握することが難しい状況にありました。一つひとつの工程を管理して総合的に俯瞰し、効率的な運用を行うには倉庫のデジタル化が必要不可欠といえるでしょう。
倉庫管理システムや輸配送管理システム、物流ロボットの導入など倉庫のデジタル化を促進することにより、サプライチェーンの総合的な強化をはかれます。物流の全体像を見渡し、非効率な部分を是正しながら物流ロボットによる業務効率化を行うことで、サプライチェーンが効率化されコスト削減やリードタイムの短縮、業務負担の軽減などが期待できます。
倉庫シェアリングサービスのWareXは、荷主企業の希望条件に合わせて最適な倉庫とマッチングを行うサービスです。ロケーションやサイズ感などさまざまな希望に沿ったシェアリング倉庫を簡単に探せるので、スポットで倉庫が必要になった際などに気軽にお使いいただけます。
荷物の管理はオンライン上ですべて完結し、請求もお使いいただいた分だけなので安心してご利用いただけるのもメリットです。
商品の製造から販売までの一連の流れを表すサプライチェーンと、それを管理するサプライチェーン・マネジメントの考え方は、在庫管理や物流需要の増加、コスト削減など、さまざまな要素に密接に関わってきます。
物流コストの増加や労働力不足が深刻化していく中、従来型のアナログな管理手法からデジタル化に舵を切り、サプライチェーンを強化していくことが大切です。