目次
「輸送費について基本的なことを知りたい」と思った場合、物流業務に携わる人が知っておくべき情報は、次の通りです。
陸上:「トラック輸送の『標準的な運賃』」(全日本トラック協会)
海上:「投資関連コスト比較調査」(日本貿易振興機構)
輸送費は近年上昇傾向にあるうえに、物流コスト全体の約60%と多くを占めているため、出来る範囲で削減しないと収益への影響があります。
そこで本記事では、輸送費に関する基礎知識について幅広く解説したうえで、コストカットの方法を輸送手段別にご紹介します。
自社の輸送費を見直すうえで重要な情報となるので、ぜひ参考にしてくださいね。
コストカットの方法を先に知りたい場合は、「5.【輸送手段別】輸送費を抑える4つの方法」をご覧ください。
冒頭でもお伝えしたように、輸送費とは物流にかかるコストのひとつで、商品を運ぶ際に必要な運賃のことを指します。
この章では、「輸送費」というものの定義について、以下の順に解説していきます。
・輸送費とは商品を運ぶ際に必要な運賃のこと
・運送費・運賃の違い
・輸送費の金額が決定する仕組み
それぞれ詳しく見ていきましょう。
物流業務にはさまざまなコストが発生しますが、そのうちの「商品を運ぶのに必要な運賃」のことを「輸送費」と呼びます。
具体的には、以下のようなものが輸送費に該当します。
輸送費は、「運送費」「運賃」などと表現されることもあります。
それぞれの意味の違いは、次の通りです。
「運賃」はやや広い意味を持つ言葉であるため、物流業務の中で使われる用語としては、「輸送費」もしくは「運送費」と呼ばれるのが一般的です。
輸送費の金額が決まる仕組みは、陸上・海上・航空といった輸送手段によって異なります。
上の表の通り、同じ輸送手段であっても商品の量や輸送先といったさまざまな要因によって輸送費は変動します。
「どんな商品」を「どのようにして」「どのくらい」輸送するかは、企業やケースごとで大きく異なるため、輸送費の相場は具体的な金額を算出するのが非常に難しいのです。
続いては、物流業界全体から見た輸送費の現状について、輸送手段別に解説していきます。
・陸上輸送(トラック)
・海上輸送(船)
・航空輸送(飛行機)
自社で取り扱いのあるものは特に、入念にチェックしておきましょう。
トラックを利用した陸上輸送費は、近年上昇傾向にあります。
運送業界ではかねてからドライバーの労働環境悪化に伴う人手不足が問題視されており、令和2年4月には労働環境改善のため、国土交通省が「トラック輸送の標準的な運賃」を定めました。
基準となる金額を国が設けたことで、物流会社が運送会社へ輸送費の値下げ交渉をしづらくなっているという現状があります。
船で貨物を運ぶ海上輸送費も、世界的に高騰しつつあります。
海上輸送を円滑に行なう上で欠かせないコンテナの製造がコロナ禍でストップしてしまったことにより、世界中の海上輸送費は2022年にピークを迎えています。
また、コンテナ不足によって輸送現場が混乱し、価格高騰以外にも輸送遅延といった問題が発生しています。
新型コロナウイルスの影響で航空便の運航が減り、2020年にピークを迎えた航空輸送費は、感染拡大が落ち着いてからはやや低下しています。
しかし、長期的に見た場合の航空輸送費は値上がりしており、コロナ以前のコストを下回ることはありません。
航空輸送費がコロナ以前の水準に戻らない最大の原因は、海上輸送の遅延にあります。
「コンテナ不足によって思うように商品を輸送できない物流会社が、海上輸送の代わりとして航空輸送を活用したため、需要が高まり航空輸送費も高騰する」という仕組みです。
ここでは、世界的に輸送費が上昇している今、自社の輸送費がかかり過ぎていないか確認する方法をお伝えします。
輸送費が適正かどうかを確認する手順は、以下の3ステップ。
陸上輸送・海上輸送・航空輸送それぞれの標準的な料金の算出方法を解説していくので、利用率の高いものからチェックしてみましょう。
陸上輸送の輸送費は、国土交通省と全日本トラック協会が公開している「トラック輸送の『標準的な運賃』」を参考に算出します。
標準的な運賃は以下の要素によって変動します。
・車両の走行距離(走行時間)
・最寄りの運輸局
上の例のように、「トラック輸送の『標準的な運賃』」内に記載された運賃表と照らし合わせて、標準的な運賃を確認しましょう。
海上輸送費は船会社や航路によって扱いが異なるだけではなく、需給状況や経済事情により料金改定が行われるため、標準的な金額の計算が困難です。
そこで、日本貿易振興機構が実施している「投資関連コスト比較調査」のレポートで、大まかな相場を確認しましょう。
「標準的な輸送費の金額がどうしても知りたい」という場合は、複数の船会社に見積もりを取ることをおすすめします。
航空輸送費は、全世界共通で次の方法で算出されます。
レートは輸送先の国によって異なるうえに、リアルタイムで変動しているため、各航空会社が公開している「為替情報」を目安として活用するのがおすすめです。
続いては、これまでの内容で「自社の輸送費が過剰にかかりすぎている」と判断した方に向けて、輸送費を抑える実践的な方法を紹介します。
各方法についての
・実践方法
・メリット
・デメリット
・こんな企業におすすめ
を解説していくので、あなたの会社の状況に最もマッチするのを選びましょう。
運送会社と荷主(物流の依頼主)の間で結んでいる契約を、「定期輸送」から「スポット輸送」に変更する、という方法です。
決められた周期で車両を手配するのではなく、必要な時に個別に輸送を依頼することで、余分な輸送費がかかるのを抑えます。
トラックを一台丸ごとチャーターする「チャーター便」から、他の荷物と一緒に運んでもらう「混載便」に切り替える、という方法です。
「燃料費」や「人件費」を複数の会社と折半することで、自社で負担する輸送費を削減できます。
海上輸送したい商品をコンテナに詰められるだけ詰めることで、荷物1つあたりの輸送費を抑える、という方法です。
コンテナ輸送は、最大積載量の範囲に収まれば、どれだけ積んでも自由であるため、この性質を有効活用します。
「社会情勢の影響で以前よりも大幅に上がってしまった航空輸送費をなんとかしたい」という場合は、輸送手段をフェリーに切り替えることをおすすめします。
燃料費が高騰している航空輸送は、値下げの余地がないためコストカット対策をしづらいというのが現状です。
航空輸送よりも安価で、なおかつコンテナ船を使った海上輸送よりも時間のかからないフェリー輸送の特徴。
新しい輸送手段の選択肢として、検討してみてはいかがでしょうか。
「顧客が全国各地に分散していて移動距離が長くなり、陸上輸送費がかさんでしまう」
といった場合は、「5.【輸送手段別】輸送費を抑える4つの方法」で紹介した「スポット輸送」「混載便」を利用する他にも、「倉庫シェアリングで拠点を増やす」という対策が輸送費を抑えるのに有効です。
全国各地のシェアリング倉庫を探して契約できるサービス「WareX」なら、自社倉庫を構えずに手軽に拠点を増やすことができます。
拠点を増やしてトラックの長距離移動が減ることで、物流の効率化アップと輸送費ダウンを図れます。
「陸上輸送費を削減したい!」という場合は、ぜひ「WareX」の活用もご検討ください。
最後に、記事の重要ポイントのおさらいをしましょう。
物流にかかるコストのひとつで、商品を運ぶ際に必要な運賃のこと
例)
・車両のチャーター費用
・宅配便の配送料
・自社所有のトラックのガソリン代
・減価償却費 など
・陸上輸送費:軽油の価格高騰や人件費の値上がりにより上昇傾向
・海上輸送:コンテナ不足により世界的に上昇傾向
・航空輸送:燃料費の高騰・海上輸送の代替需要により、ピークを過ぎたものの上昇傾向
→輸送手段を問わず値上がりしているため、物流業務に携わる企業は対策が必要
標準的な輸送費を計算する
・陸上輸送費:標準的な運賃(時間制・距離制)+その他料金(待機時間料・高速道路やフェリーの利用料)
・海上輸送:日本貿易振興機構の「投資関連コスト比較調査」で大まかな相場を確認
・航空輸送:商品の容積重量(重量に対して必要なスペース)×レート(輸送先によって異なる)
→実際にかかっている輸送費と比較し、大幅に上回っているようであればコスト削減に踏み切る
・スポット輸送を活用する(陸上)
・混載便を活用する(陸上)
・コンテナの積載量を最大化する(海上)
・フェリー輸送に切り替える(航空)
→いずれの方法にも異なるメリット・デメリットがあるため、自社の輸送手段や現状に合ったものを選んで実践するのがおすすめ
輸送費の水準が上がり続けている今、余分なコストをかけないよう、しっかりと対策していきましょう。
本記事の内容が、あなたの会社の輸送費見直しの参考になれば幸いです。