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「新たに倉庫業に参入したいが、どういったものなのか具体的なイメージが湧かない」
「どんな種類やルールがあるのかわからない」
倉庫業を始めるにあたって、こういった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
倉庫業とは「第三者から預かった物を倉庫で保管する事業」のことです。
倉庫業で成功するためには、まずは倉庫業におけるルールをしっかり守って顧客から信頼される倉庫業者になり、そのうえで顧客に寄り添ったサービスを提供することが重要です。
本記事では、新たに倉庫業に参入する企業や個人の方が知っておくべき知識を完全解説します。
倉庫業の基礎知識から事業を成功させるために欠かせない実践的なポイントまでお話しするので、ぜひ最後までご覧ください。
倉庫業とは、「第三者から預かった物を倉庫で保管する事業」のことです。
より具体的に説明すると、上の図のように「荷主と消費者の間に入って商品を保管することで対価を得る」というビジネスです。
商品を保管するスペースがない・保管に人員を割けないといった事情で「自家倉庫」を持てない企業が、倉庫業者の「営業倉庫」に商品を預け、消費者に商品を届けるという形が一般的です。
※倉庫業者が所有する「営業倉庫」について詳しく知りたい場合は、定義や自家倉庫との違いについて解説したこちらの記事をご覧ください。
倉庫業には
といった3つの種類があります。
現時点で事業のイメージが固まっているのであれば、あなたが参入するのはどの倉庫業にあたるのかチェックしておきましょう。
倉庫業の種類と自分の該当する区分を知っておくことで、その後の手続きや必要な準備がスムーズになります。
3種類の倉庫業のうち、最も一般的で幅広いものが「普通倉庫業」です。
普通倉庫は、主に次の5つに分類されます。
それぞれの倉庫の定義・保管できる物・設備基準は、以下の表の通りです。
上の表からもわかる通り、普通倉庫ではさまざまな物品が保管されており、倉庫業者のほとんどはこの「普通倉庫業」に該当します。
常温品を保管する「普通倉庫業」に対して、冷蔵品を保管する倉庫業のことを「冷蔵倉庫業」と呼びます。
冷蔵倉庫の定義・保管できる物・設備基準は、以下の表の通りです。
冷蔵倉庫は普通倉庫よりも細かく設備基準が定められているため、新たに冷蔵倉庫を建設する場合や普通倉庫を冷蔵倉庫に改装する場合は、建設会社などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
最後は、物品を海や川に浮かべて保管する「水面倉庫業」です。
水面倉庫は、原木などの乾燥すると亀裂が入ってしまう物品を、湿度を保ちながら保管するために利用されます。
水面倉庫の定義・保管できる物・設備基準は、以下の表の通りです。
ここまで3種類の倉庫業について解説してきましたが、スペースだけ貸して修出庫や物品の管理は借り主が行う「貸し倉庫」に関しては、倉庫業には当たらないので注意が必要です。
上の図のように倉庫を第三者に貸す場合、貸主の事業は「倉庫業」ではなく「不動産賃貸業」に該当します。
倉庫の設備が一定の基準を満たしているかチェックしたり、倉庫業を営むための登録を行うのは、基本的に倉庫を実際に理容する借主側だと認識しておくと良いでしょう。
倉庫業の主な業務には、預かった物品を保管するだけではなく、依頼を受けてから出庫するまでに8つの工程があります。
実際に倉庫業をスタートさせる前に、どんな業務が必要なのかを具体的にイメージできるよう、ひとつずつしっかりとチェックしていきましょう。
まずは、顧客である小売店やメーカーなどから依頼を受ける「受託」業務があります。
受託は、これから倉庫で物品を預かるための準備を整えるために必要な業務です。
物品の種類や数量がはっきりしたら、倉庫のどこに保管するかも、この段階で決めておくと入庫作業がスムーズになります。
続いて、運ばれてきた商品の検品を行います。
契約内容と異なる点や不良品が検品によって見つかった際は、速やかに顧客に報告しましょう。
検品を終えたら、商品を倉庫に入れる「入庫」業務に入ります。
入庫業務を終えたところで、顧客から倉庫業者への商品の受け渡しが完了となります。
搬入した商品が出庫されるまでの間、倉庫内で保管します。
商品にとって最適な状態を保ち、品質維持に努める保管業務は、倉庫業者の最も重要な業務と言えるでしょう。
流通加工は、商品をいつでも出庫できる状態にしておく業務です。
商品の保管をメイン業務とする倉庫業者にとって、流通加工はやや専門外の業務になるため、荷主の方で行うといったケースもあります。
保管している商品へ注文が入ったら、倉庫内から該当の商品を選び出す「ピッキング業務」を行います。
ピッキングした商品を、配送ルートごとに仕分ける業務です。
全国各地から注文を受け付けている商品など、配送エリアが広ければ広いほど仕分けの業務量も増えるため、繁忙期は仕分け専門のスタッフを一時的に雇うといったケースもあります。
準備がすべて整ったら、最後は商品を倉庫から出す「出庫業務」に移ります。
荷物を引き取りに来た配送業者に渡したところで、倉庫業者の業務は全て完了となります。
トラックに積んだ荷物を消費者の元に届ける「配送業務」は、配送業者に委託するケースが一般的ですが、配送まで倉庫業者が行う場合もあります。
続いて、倉庫業を始めるなら知っておくべき「倉庫業法」について、次の順に解説していきます。
倉庫業のルールは倉庫業法によって定められていますが、ルールが厳しく細かいため、違反している業者も少なくはありません。
顧客から信頼される倉庫業者になるには、倉庫業法への理解を深めてルールを遵守することが非常に重要なので、本章の内容はしっかりと確認しておきましょう。
倉庫業法とは、国が定めた倉庫業者が守らなければならないルールです。
「他人の貴重な物品を預かる」という営業倉庫の特性から、ルールが細かく・厳しく定められており、違反すると罰金や営業停止等の罰則があります。
※倉庫業法の原文はこちらから確認できます。
倉庫業法の数ある項目のうち、最も重要なポイントは、「倉庫業を営むには事前登録が必要」という点です。
なぜ事前登録が倉庫業法における最も重要なポイントかというと、このルールを守らなかった場合、次のようなデメリットが発生するためです。
営業倉庫を利用する小売店やEC事業者の間でも、「認可を受けていない倉庫業者は避ける」というのが常識となりつつあるため、事前登録の申請は最優先で行うようにしましょう。
倉庫業法についてもっと知りたいという場合は、倉庫業法全体についてより詳しく解説したこちらの記事をご覧ください。
ここからは、倉庫業で開業するまでの流れを、5つのステップで紹介します。
倉庫業を営むうえで欠かせない「倉庫業登録」について詳しく解説しているので、必ずチェックしてくださいね。
まずは、倉庫を購入する前に次のような事前準備を整えます。
せっかく倉庫を購入・建設しても、それが倉庫業法に違反しているものだった場合、事業計画が白紙になってしまいます。
運輸局や不動産業者といった専門家に必ず相談してから、倉庫を購入しましょう。
購入する物件が決まったら、まずは必要書類を集めて倉庫業登録の申請をします。
倉庫業登録申請をし、国土交通省の審査を通過してからでなければ、倉庫業を開始することはできません。
以下の表を参考に、必要書類を揃えて運輸局に提出しましょう。
※国土交通省のWebサイトからダウンロードできるもの
https:://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu05100.html
上の表を見てもわかる通り、倉庫業登録申請には、数多くの書類を提出する必要があります。
倉庫の建設に着手したタイミングや、不動産契約を結んだタイミングなど、できるだけ早めに準備に取りかかるようにしましょう。
なお、実際に書類を作成する際には、各書類の注意事項や記入例が記載された『倉庫業登録申請の手引き』(国土交通省)を見ながら用意するとスムーズです。
申請書類を提出したら、運輸局による倉庫業登録の審査を受けます。
審査中は申請側が行うことは特にないため、営業開始の準備を進めながら審査が終わるのを待ちましょう。
運輸局から送られてくる「登録通知書」を受け取れば、無事に審査を通過したことになります。
審査結果がわかるまでの期間はおよそ2〜3ヶ月ですが、審査中に書類の訂正や追加提出を求められれば、さらに伸びる可能性もあります。
続いて、倉庫業の登録に必要な税金である「登録免許税」を納付します。
送られてくる案内に従って、以下の手続きを行いましょう。
これでようやく登録が完了し、「国から認可を受けた倉庫」として営業することができます。
無事に登録が完了したら、いよいよ倉庫業の営業開始です。
保管料などの料金を決め、以下の情報を営業所内の見やすい場所に掲示しましょう。
ここからは、倉庫業を成功させるために必要な2つのポイントについて解説します。
無事に倉庫業の登録を済ませることができても、顧客を獲得して事業を軌道に乗せなければ、ビジネスは成り立ちません。
「倉庫業を立ち上げた後のこと」をイメージするために、この先の内容をしっかりと確認しておきましょう。
「倉庫業法をしっかり守り顧客から信頼される倉庫業者になる」というのは、倉庫業を成功させる基本であり、重要なポイントでもあります。
なぜなら、倉庫業法の厳しいルールを守れずに違反してしまう倉庫業者は少なからず存在しており、そういった業者と競合するために「この業者になら安心して荷物を預けられる」といった信頼感が必要だからです。
実際に、どんな形で倉庫業法に違反している業者がいるのか、一例を見てみましょう。
上記のような業者は倉庫業法違反にあたり、国から行政指導を受けた・営業停止を言い渡されたといった事例もあります。
こういった背景を踏まえて、行政書士などの専門家は、「倉庫業法を遵守していない倉庫業者は選ばないように」と、利用者側へ呼びかける声も強まっています。
利用者から見た「信用できない業者」にならないためには、倉庫業法をしっかり守って堅実に営業することが何よりも重要です。
「顧客に寄り添ったサービスを追究して他社と差をつける」というのも、倉庫業を成功させるポイントのひとつです。
商品を販売するメーカーや小売店は、保管業務を外部委託する際、「本当にきちんと保管してもらえるのか?」「うちの商品を保管するのに最適な環境なのか?」といった不安を抱えるものです。
次の例のように、顧客の要望や不安を読み取り、それに寄り添ったサービス内容を検討してみましょう。
顧客の声に耳を傾け、柔軟な提案をすることで、「他にはない倉庫業者」として成功の道が開けます。
「実際に倉庫業をスタートしてみたら、思うようにスペースが埋まらず、稼働率の低さから十分な収益を得られず困っている」
「営業をかけようにも人員が足りない」
こういった場合は、荷主と倉庫業者を繋ぐマッチングサービスを導入するのがおすすめです。
倉庫のマッチングサービス「WareX」なら、登録するだけでWareXがあなたの倉庫と条件がマッチする荷主を探し、スムーズに寄託契約を結ぶことができます。
顧客を獲得する際にネックとなる
「手当たり次第営業しても条件に合う荷主が見つからない」
「荷主との条件のすり合わせに時間がかかってしまう」
といった手間が省けることで、最小限のコストで収益アップを目指せます。
倉庫業をスタートさせても倉庫が上手く稼働しない場合は、ぜひ一度WareXの利用をご検討ください。
「具体的な事例を知りたい」という場合は、実際にWareXを導入して倉庫の空きスペース問題を解消したこちらの事例をご覧ください。
最後に、本記事の重要ポイントをおさらいしましょう。
倉庫業とは「第三者から預かった物を倉庫で保管する事業」のことです。
倉庫業には「普通倉庫業」「冷蔵倉庫業」「水面倉庫業」の3種類があり、それぞれ保管できる物や守らなければならない設備基準が異なります。
倉庫業の業務には、依頼を受けてから出庫するまでに主に8つの工程があります。
倉庫業を始める法人・個人が知っておくべき法律として、「倉庫業法」というものがあります。
最重要ポイントである事前登録を行わないと、罰金や顧客からの信用を失うといったデメリットがあるため、注意が必要です。
倉庫業で開業するまでの流れは、以下の5ステップ。
用意する書類が多く審査にも時間がかかるため、できるだけ早めに着手することが重要です。
また、倉庫業は登録を完了させたところからがスタートです。
倉庫業を成功させるために、次のポイントも押さえておきましょう。
本記事の内容が、あなたの事業の成功に少しでもお役に立てていれば幸いです。