国際物流とは、国際的に取引されるモノの流れのことです。
国内輸送ではトラックや鉄道が用いられますが、国際物流で利用される輸送手段としては船や飛行機が一般的です。特に日本は海に囲まれていることから、他国と取引を行うためには船や飛行機以外の選択肢はほとんどありません。
国際物流では、税関を通過するまでの短い期間だけ商品を保管しておく「保税倉庫」と呼ばれる倉庫が活用されます。保税倉庫は空港や港の近くに設置されるケースが多く、保税倉庫を構えているエリアは「保税地域」と呼ばれており、保税倉庫では保税地域の荷役全般を担当します。
国内物流では、事業者が商品を保管している倉庫から目的地に配送する際に利用されることが多いといえます。遠方に配送する場合は中継地点として物流拠点を経由し、トラック間で荷物の積み替えを行うこともありますが、税関を通過する必要がないため保税倉庫を利用することはありません。
一方で国際物流では基本的に関税や通関の手続きが必要になるため荷物が海外に発送されるまでに時間がかかることが多く、保税倉庫が積極的に活用されます。
国際物流では、荷物を発送するまでの手続きが煩雑です。海外に発送するための「通関手続き」や海外用の輸出梱包作業、インボイスの発行などが必要となるためです。
「製造して自社倉庫に保管し、注文後にピッキングと出荷・梱包作業を行って配送する」という基本的な流れは国内物流と同じですが、国際物流では通関手続きのための通関資料を作成する必要があります。海外に発送する荷物に関税がいくらかかるかを計算しておく必要もあるため、国内物流では発生しないさまざまな手続きに多くの手間やコストが発生します。
国際物流は多くの作業が発生することをお伝えしましたが、今では国際物流は企業にとって必要不可欠なものとなっています。つぎに、その背景について解説します。
円高や東日本大震災後の電力不足、高率な法人税、厳格な労働・環境規制などをきっかけに、企業のグローバル化が年々進んでいます。それにより、調達・生産・販売に関わるさまざまな業務を海外で行うことによって、国内製造だけで完結する際のリスクを回避しようと考える企業が増えました。
このような企業のグローバル化に伴って、物流業者も海外展開を進めています。物流業者は、現地で荷主企業が生産拠点を設立する際に生産設備の輸送や拠点のメンテナンス業務などを通じて、荷主企業のグローバル化を支援した結果、国際物流が増加しました。
高度経済成長期には国内で集中的に製造して輸出することが合理的であるとされていましたが、関税の引き上げや円高などの影響により、販売国の近くに生産拠点を構えて製造・販売を行うことが合理的であるという考え方に変化しました。このことから、国内生産だけでなくグローバル視点で調達・生産を行ってコスト削減をはかる企業が増えており、国際物流が増加しています。
今後も増え続ける輸出入にスムーズに対応するためには、国際物流を最適化する必要があるといえるでしょう。
国際物流を成功させるために、解決しなければならない課題があります。ここでは、代表的な5つの課題をご紹介します。
まず、物流プロセスがブラックボックス化し、コスト分析が難しくなるという課題があります。
国際物流では、さまざまな条件を加味して物流コストを算出しなければなりません。国内物流の場合は原材料の調達にかかった原価や人件費、工場の稼働にかかった費用などを把握できれば比較的簡単に製造コストを算出できますが、国際物流では為替レートや国内外の人件費の配分なども考慮する必要があるためです。
国際物流では関与する企業が増えやすく「一つひとつのプロセスにどの程度のコストがかかったのか」を厳密に算出することが難しくなります。このことから、企業全体のコスト分析が進みにくく、改善点がわかりにくくなるという課題を引き起こしやすいといえるでしょう。
国際物流では、海外とのやり取りが複雑なためにミスが起こりやすいという課題もあります。
例えば海外で製造したパソコンを輸入して国内販売する場合、現地で製造するための部品を調達する必要があります。このとき、部品を輸送するための物流業者は現地の業者を利用するのが一般的です。
現地業者を利用する場合、書類作成は現地の言語で進める必要があり、通貨や費用の算出方法なども日本と異なります。製造後、輸入手続きの書類も複雑になりがちです。
このように国際物流では、国内物流にはないさまざまな手続きを行う必要に迫られるため、ミスも起こりやすいといえます。
一般的に、国際物流は商品の発注から納品に至るまでのリードタイムが長くなる傾向にあります。船を利用する場合の定期便は週に1~2回程度が一般的であり、遠方地域から日本国内に到着するまでには数週間を要する場合もあるためです。
さらに、商品を海外倉庫に発注しても国内に運ばれてくるまで1ヶ月以上が必要になるケースもあり、現場では長期的なスケジュールを見据えた発注業務を行うことが求められます。
輸送機関が長期化しやすい国際物流は、輸送中のアクシデントに見舞われやすい環境にあるといえます。悪天候による貨物への被害や通関手続きの不備による遅延、政治的リスクなど、国内物流では考えにくいトラブルが生じる可能性は少なくありません。
荷物の到着がスケジュールよりも遅れると、その後の生産・販売に大きな影響を及ぼします。
加えて、アクシデントによって部品や製品を失えば、売上につながらないどころか損失が発生する可能性もあるでしょう。
国際物流では、リードタイムの長さやアクシデントのリスクなどを考慮して、欠品を回避するために過剰な在庫を抱えがちです。
「できるだけ在庫を多くもっておくことで、在庫切れを防ごう」と考えて、安全在庫を見積もるケースは多いようです。しかし在庫を抱えすぎると、保管コストが増大するだけでなく余剰在庫や廃棄リスクの原因になるという問題もあります。
前述のとおり、国際物流にはさまざまな課題があります。これらの課題を解決するためには、システムを使った情報の可視化や細かなモニタリングを行うのがおすすめです。
物流管理システムを導入することでこれまで曖昧になっていたプロセス別のコストを詳細に可視化し、コスト管理を行うことは効果的です。
国際物流のコスト管理は複雑性が高く、 人の手などのアナログで行うと過剰な工数や誤差が発生する感応性が高まりますが、システムを利用すれば取得したデータに基づいて正確な計算が可能になります。
在庫管理の課題には、細かなモニタリングや予測によって適正在庫を保つアプローチが有効です。
倉庫の在庫が「どのタイミングでいくつ動いているのか」を詳細に把握できれば、発注時期をより正確に予測できるようになり、リードタイムが長い国際物流であっても在庫切れを起こしにくい運用が可能になるでしょう。
もし在庫量が頻繁に変動するようであれば、倉庫シェアリングサービスの WareX がおすすめです。希望する期間やエリアの空き倉庫をすぐに利用できるため、倉庫が必要になったタイミングですぐに手配できます。
企業のグローバル化が進み、国際物流の重要性が高まっています。しかし国際物流には国内物流に比べて手続きが煩雑な面もあり、リードタイムの長さや輸送中にアクシデントが発生する可能性、それに伴う過剰在庫などが課題になっています。
国際物流の課題を解決するには、システム導入によって情報の可視化や詳細なモニタリングを行う方法が効果的です。物流管理システムや倉庫シェアリングサービスなどを取り入れて、国際物流をスムーズに処理できる体制を整えましょう。