物流アウトソーシングとは?4つのメリットや導入する方法を解説

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2022-06-03
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目次

はじめに

・物流アウトソーシングとは、自社の物流業務を外部に委託することです。

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昨今はEC市場や宅配サービスの拡大により、1日に出荷する商品量が増加している企業やECが多いです。そのため、自社内で物流業務を行うことが大きな負担となっており、物流業務のプロフェッショナルに委託できる物流アウトソーシングが注目を集めています。

物流アウトソーシングを活用することで本来注力すべきコア業務に集中でき、更なる事業拡大や収益アップができる基盤を整えられます。それだけでなく、物流業務に特化した設備やノウハウがある業者に委託することで、自社の物流サービスの質を向上できます。

メリットの多い物流アウトソーシングですが、委託できる業務内容や適切な委託先の選び方を把握しないと最適な物流アウトソーシングが叶いません。

そこでこの記事では、物流アウトソーシングの業務内容や導入手順、メリットやデメリットなど物流アウトソーシングに関する基礎知識をまとめて解説していきます。

【この記事を読むと分かること】
・物流アウトソーシングとは
・物流アウトソーシングに委託できる業務内容
・物流アウトソーシングの委託の種類
・物流アウトソーシングを活用する4つのメリット
・物流アウトソーシングの注意点
・物流アウトソーシングの費用
・物流アウトソーシングを始めるタイミング
・物流アウトソーシングを導入する手順
・物流アウトソーシング先を選ぶときに確認したい4つのポイント

この記事を最後まで読めば物流アウトソーシングの概要や導入するべき理由が把握でき、活用を検討できるようになるはずです。

物流アウトソーシングの導入で失敗しないためにも、あらかじめ基礎知識を身につけておきましょう。

物流アウトソーシングとは

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物流アウトソーシングとは、自社の物流業務を外部に委託することです。

昨今はEC市場や宅配サービスの拡大により、日本国内の宅配便の取り扱い数が増えています。国土交通省が公表している2020年度の宅配便取扱個数は48億3647万個となっており、前年度から約11.9%も増加しています。

消費者に届ける商品が増えると、各企業で行っている物流業務が追い付かなくなります。

・商品を保管するスペースがない
・物流業務に携わる人材が不足している
・物流業務に時間を要する

などの問題を抱えることになるのです。そこで、注目されているのが物流アウトソーシングです。物流業務のプロフェッショナルに在庫管理や入出庫作業を委託することで、人材不足や販売機会の損失、商品保管スペースの確保などさまざまな物流業務の問題点を解消できます。

経済産業省と中部経済産業局が連名で公表している「物流アウトソーシングマニュアル」によると、アウトソーシングを活用、強化することで物流改革を行う企業は31.3%となっています。(東海3県の物流企業 166社の回答を分析)

物流企業のうち10社に3社が物流アウトソーシングの活用や強化を検討していることからも、物流アウトソーシングの需要の高さが伺えます。

参考:
国土交通省「令和2年度宅配便取扱実績について
経済産業省・中部経済産業局「物流アウトソーシングマニュアル

自社物流との違い

自社物流とは、自社内に物流機能があることを指します。事業を始めて間もない頃は取り扱う商品数と注文数が少ないため、自社内に在庫管理スペースを設けて物流作業をすることがあります。

事業が成長し一定の受注を確保できるようになると、物流倉庫などを借りて物流のインフラを構築し自社で物流業務ができる体制を整えるケースもあります。自社物流と物流アウトソーシングには、主に下記の3つの違いがあります。

1. 人材や設備の確保
自社物流は、物流業務を円滑に進めるためのシステムや人材を自社で確保しなければなりません。人材不足が深刻化している中で、一定の人材を確保し育成するには時間と労力がかかります。

物流アウトソーシングでは委託先が設備と人材を揃えているため、自社で揃える必要がありません。そのため、物流業務開始時の初期投資や人材確保の手間を大幅に削減できます。

2. 需要の変化への対応
自社物流では、商品の需要の変化にも自社内で対応します。例えば、大々的なPRにより自社商品の注文が急に増えた場合、物流業務に携わる従業員だけでは作業が追いつかなくなり納期を遅らせる対応を取らなければならない可能性があります。

物流アウトソーシングでは需要に増減があったとしても、それに対応できる体制を整えています。季節やイベントによって商品の注文数が変化する場合でも、通常通りの対応が可能です。

3. 物流業務の拠点ができる
自社物流ではよほど大きな企業でない限り、物流業務を集約した拠点を作ることが難しいです。倉庫の確保や管理、物流システムの導入に費用や労力がかかるためです。

物流アウトソーシングなら、多額の初期投資をしなくても物流業務の拠点を持てるようになります。1か所に物流業務を集約することでスピード感を持って物流業務ができます。

本記事の「8.物流アウトソーシングを始めるタイミング」で詳しく解説していますが、自社物流では運用が難しくなったタイミングで物流アウトソーシングを検討してみることがおすすめです。

物流アウトソーシングに委託できる業務内容

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物流アウトソーシングでは、主に下記のような物流業務を委託できます。

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委託の範囲は委託先や委託内容により異なるため、一例として参考にしてみてください。

入荷

入荷とは、仕入先から発注した商品が届くことを指します。商品が届いたら、まずはトラックなどの車両から商品を降ろす作業を行います。

入荷する商品が少ない場合や軽い場合はいいですが、家電製品や割れ物など扱っている商品によっては非常に大変な作業です。商品が入荷する度に立会いをして作業の安全性を確保するのは、時間や労力がかかります。

また、トラックのサイズや入荷の頻度に応じて、荷下ろしをするスペースの確保が必要です。都心部を始め荷下ろしをする環境の確保が難しい場合は、物流アウトソーシングを活用すると入荷作業を効率化できます。

検品

入荷した商品を入庫する前には、検品を実施します。入荷時の検品は、入荷された商品が適切な商品なのか確認をする作業です。

適切な検品ができていないと、配送時や在庫管理時のトラブルにつながります。例えば、入庫時の検品を怠ると検品時に商品在庫数が合わず、本来は在庫がないにも関わらず注文を受けてしまう可能性があるのです。商品数や入荷頻度が多いと大変な作業となりますが、アウトソーシングをすると効率よく進められます。

検品では

・発注した商品と合っているか
・発注した個数と合っているか
・商品に破損や異常はないか

を目視で確認します。輸入品や食品、衣類など扱う商品によっては、通常の入荷検品に加え検品項目を設けて入念な検品をすることがあります。例えば、食品を扱う場合は開封しなくても異物混入の有無を確認できる機械を用いて、安全性をチェックすることがあります。もちろん、製造工場でも随時検品を実施していますが、入庫前に再度実施することも多いです。

検品は目視での確認と同時に、倉庫管理システム(物流倉庫内の在庫や入出庫の管理を効率化するシステム)を活用することが増えています。バーコードでスキャンをしたり端末に情報を打ち込んだりすると、発注情報との照らし合わせや在庫数の更新ができ効率よく在庫管理ができます。

また、入庫時の検品に加えて各工程ごとに検品を挟み入念な確認を行うなど、取り扱う商品によって検品の回数や検品をするタイミングが異なります。

入庫

入庫とは、届いた商品を定められた保管場所に入れることを指します。車両から降ろした商品をそのまま出庫作業に移すケースを除いて、一度物流倉庫や物流センター内に保管をします。商品の主な保管方法には、下記の2種類があります。

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固定ロケーションとは、常に同じ場所に同じ商品を保管する方法です。保管場所が変動しないため、作業や管理がしやすいところがメリットです。

一方で、フリーロケーションは、商品の保管場所を定めず臨機応変に対応する方法です。商品の変動が激しい場合や出庫数の変動が激しい場合は、保管場所を固定してしまうと対応できないことがあります。

物流アウトソーシングでは保管スペースの空き状態に応じた保管方法を工夫しながら、保管効率の向上を視野に入れて作業を行います。

また、入荷時には商品に応じて、セット組を行うケースもあります。セット組とは複数の商品を1つとして扱う際に、商品をまとめる作業です。

例えば、タオルとハンカチをセットにして販売している場合は、入庫時にタオルとハンカチをセットにして保管をします。入庫時にセット組をすることで、適切な在庫管理ができるようにしておきます。

保管

出庫作業を行うまでは、倉庫や商品の保管スペースを使い一時的に保管をします。保管をするときは、下記の3つが重要となります。

1. 商品の品質を保つ
商品を保管するときは、商品の品質を維持することが大切です。商品を保管している間に品質が劣化し、出庫できなくなってしまっては意味がありません。温度や湿度、光量などの環境を調整し商品に合う環境で保管をします。

例えば、衣類なら直射日光が当たる場所で保管をすると色褪せする可能性があります。日光を避け適度な湿度で保管をできるように、遮光カーテンや空調設備を活用しながら保管場所の環境を整えます。

2. 在庫の管理を行う
商品を保管している段階で在庫数を誤ると、商品の発注に影響が出ます。例えば、入荷時に在庫数のカウントを間違えており気づかないまま管理を継続すると、出庫をする際に欠品を起こす可能性があります。

定期的に棚卸しをして在庫数を確認し、在庫管理票や在庫管理システムに反映されている在庫数と一致しているかチェックを行います。

3. いつでも商品をピッキングできる状態にしておく
ピッキングとは、保管されている商品から注文の入った商品を集める作業です。注文が多い場合はピッキングの精度とスピードが、出庫作業の効率を左右します。

在庫管理が雑だと、ピッキング作業に移った際になかなか商品を見つけられません。「2-3.入庫」で触れたような保管場所の工夫はもちろんのこと、整理整頓や取り出しやすさを考慮した保管が必要です。

物流アウトソーシングでは、手間と労力のかかる保管作業を一括して依頼できます。

帳票発行

物流アウトソーシングの委託先によっては、帳票発行などの事務作業を依頼することが可能です。帳票発行は

・運送会社ごとの伝票発行
・請求書や納品書、明細書の発行
・受注や発注データの作成、送信

など、さまざまな事務業務を指します。商品の注文が増えると、物流に関する事務業務が大きな負担となります。とくに、納品書や運送会社ごとの伝票発行はミスをすると納期遅延などのトラブルに発展する可能性があるため、慎重に行わなければなりません。

物流アウトソーシングでは知識のあるスタッフが業務を行ってくれるのはもちろんのこと、帳票発行システムや在庫管理システム(在庫や仕入先、顧客情報を合わせて管理するシステム)などを活用しながら効率よく作業を進めていきます。

ピッキング

商品の注文が入ったら、指示に従ってピッキング作業を行います。主なピッキングの方法には、下記の2種類があります。

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シングルピッキングは、注文ごとに商品を集める方法です。例えば、フライパンとコップの注文が入った場合は、指示を受けて該当のフライパンとコップを集めます。作業がシンプルなので取り組みやすいですが、注文が増えれば増えるほど保管スペースを何度も往復しなければなりません。

トータルピッキングは複数の注文分をまとめて集め、収集後に個別の注文に分ける方法です。注文数が多いときに有効な方法で複数の注文にまとめて対応し、業務効率化を図ります。

ピッキングは地図や指示書を持ちながら手探りで集める方法が主流でしたが、最近では音声での指示システムやピッキングをサポートするシステムを活用するケースも増えています。

仕分け

仕分けとは、商品をルールに従って分類する作業です。出荷する商品は、倉庫内に保管されている商品ばかりとは限りません。

入荷した商品を保管せず、そのまま出荷することもあります。その場合は、仕分けで出荷先や商品ごとに分けていきます。例えば、コンビニやスーパーマーケットなどの複数の店舗に商品を届ける際は、店舗ごとに商品の仕分けを行います。

仕分けで間違えると誤った商品を配送してしまう可能性があるので、精度の高い作業が求められます。最近は、物流システムを活用し自動で仕分けをした後に、手作業で最終的な確認をするハイブリッド型での仕分けが増えています。

梱包・流通加工

仕分けやピッキングをした商品は、商品に応じて梱包をしていきます。基本的には商品のサイズに合う段ボールや封筒に詰めて、配送時の破損や汚れを防ぎます。割れ物や精密機器は緩衝材を使用したり小さな商品は袋に入れて分かりやすくしたりと工夫をしながら行います。

ECサイトやネットスーパーなどの要望によっては

・ラッピングの対応
・チラシやクーポン、カタログの同封
・ノベルティや試供品の同封

などを行うこともあります。梱包方法が複雑になると従業員の手間が増えるため、物流アウトソーシングの委託先によってはオプション扱いや対応できないこともあるので事前に確認しておきましょう。

また、物流アウトソーシングの委託先によってはプラスアルファの機能として、流通加工ができる設備を設けていることがあります。

流通加工は商品の価値を向上させる加工全般を指すため、加工内容は多岐に渡ります。例えば、

・食品の小分け作業
・衣類やタオルへの値札、タグ付け
・生鮮食品の二次加工
・電子機器の簡単な組み立て

などが当てはまります。安全に食品加工ができる設備を備えている場合は、生鮮食品のカットや詰め合わせなどを行うことが可能です。流通加工の内容によっては専門性が高くなるので、専門の従業員を配置していることもあります。

出庫

出庫とは、商品を配送会社に渡すための準備作業のことです。出庫では、主に下記の2つの業務を行います。

1. 伝票の貼り付け
出庫をする商品に、運送会社の送り状を貼り付けます。倉庫管理システムや出荷伝票と照らし合わせながら、住所と氏名、商品に誤りがないか再度確認をして伝票を貼っていきます。

2. 車両に積み込みをする
梱包した商品をパレットの上に載せて、安全性に配慮しながら車両やコンテナに積み込む作業をします。(商品によってはパレットを使用しない場合もあります)商品に関する注意事項がある場合は、ドライバーに共有をして破損などの異常がない状態で消費者の手元に届くよう配慮します。

配送

配送は、車両に積み込んだ商品を消費者のもとに届ける作業です。運送会社や委託先の運送部門と連携をしながら、確実に消費者のもとに商品を届けます。

最近は配車配車管理システム(商品を出荷してから消費者に届けるまでの輸配送を管理するシステム)を導入して、配送状況をリアルタイムで確認できるようにしていることが多いです。

商品の問い合わせや配送の遅延が起きたときにも、商品が今どこにあるのか把握して適切な情報を伝えられます。

返品・交換処理

物流アウトソーシングの委託先によっては、返品や交換などのアフターフォローを行っている場合があります。企業側に返品や交換の依頼があっても、実際に対応できるのは在庫管理や入出庫をしている物流アウトソーシングの委託先です。

そのため、委託先に返品や交換に対応できる仕組みがあれば、スムーズな対応が実現します。返品や交換対応については消費者からの意見を聞き、交換品や他の商品を届けることになればすぐに手配を行います。

ここまで解説した業務は、物流アウトソーシングで行える主な業務です。どこまでの業務ができるのかは、委託先の物流アウトソーシングにより大きく異なるため、事前に確認をしておきましょう。

物流アウトソーシングの委託のパターン

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ここでは、経済産業省と中部経済産業局が連名で公表している「物流アウトソーシングマニュアル」に沿って、物流アウトソーシングの主な委託パターンを解説していきます。

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一言で物流アウトソーシングと言っても、さまざまな委託パターンがあるので自社に合う方法を選択するためにも参考にしてみてください。

個別の物流業務のアウトソーシング

1つ目は、物流業務ごとにアウトソーシング先を選択する方法です。例えば、配送業務はつながりのある配送会社に、倉庫管理は別の委託先にと、物流の業務で分けて別の委託先に依頼をします。

物流量が少ない場合は、分野ごとに分けて依頼をすることでコストが抑えられるメリットがあります。一方で、物流量が多くなると社内で管理しなければならない部分が増えるため、委託をする業務と自社で担う業務のバランスを取ることが難しくなります。

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物流業務を包括したアウトソーシング

2つ目は、物流業務を一括してアウトソーシングする方法です。具体的には、入庫から配送までの物流業務をまとめて委託をします。物流量が多くなった際に、自社で担う業務があると負担が大きくなります。

物流業務をまとめて外部に任せることで、自社負担を減らせるところが大きなメリットです。一方で、外部委託をする業務が増えるため、ランニングコストを踏まえて検討する必要があります。

物流業務を包括したアウトソーシングのメリットとデメリット.jpg

ロジスティクスの最適化を志向した物流アウトソーシング

3つ目は、委託をする企業の商品の調達や拠点間物流をふまえて一元的に管理をする方法です。大企業になると工場や物流拠点を複数持ち、配送先に応じて商品を手配する手法を取り入れていることが多いです。

しかし、拠点単位で物流業務やルールを定めているケースが見受けられ、委託先による管理能力の差や拠点同士の連携ができていない課題があります。

そこで、点在する物流拠点や商品の調達先をまとめて一元管理をするのがこの方法です。自社の物流業務を一元化することで、物流全体の最適化ができるところが大きなメリットです。

一方で、物流アウトソーシングのスケールが大きくなるため、計画を立てながら長期的に取り組んでいく必要があります。

ロジスティクスの最適化を志向した物流アウトソーシングのメリットとデメリット.jpg

物流管理領域を拡大したアウトソーシング

4つ目は、物流業務だけでなく企業の物流戦略においても外部委託をする方法です。まだまだ少ない方法ではありますが、自社の物流改革を進めるときに外部のマネジメントを活用することで、適切な物流アウトソーシングの選択や課題の解決を推し進めていきます。

自社の物流業務が拡大しつつあり、課題の抽出や最適化の方法に悩んでいるときに向いています。一方で、自社の物流自体を根本から改革していかなければならないため、時間やコストがかかることを念頭に置いておくことが大切です。

物流管理領域を拡大したアウトソーシングのメリットとデメリット.jpg

物流アウトソーシングを活用する4つのメリット

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物流アウトソーシングを活用するメリットとしては、下記の4つがあります。

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物流アウトソーシングの活用を検討する際に知っておきたいポイントばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

物流業務の人材雇用や人材育成の必要がない

現在、物流業界は深刻な人材不足に直面しています。「富士電機」が全国の物流、倉庫部門事業所従事者を対象にアンケートを実施したところ、人材不足を実感している声は50%以上にのぼることが分かりました。

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参考:富士電機「物流・倉庫部門における人手不足の実態調査

人材不足を実感している現場の声が多い中で、自社で人材を確保し人材を育成することは非常に大変です。とは言え、商品の注文量が増えた際に一定の人材を確保できていないと、配送の遅延や物流業務の非効率化につながります。

物流アウトソーシングは人材の確保と育成ができているため、人材不足に悩むことがありません。注文量が増えたとしても対応できる仕組みを整えているケースが多く、常に同じペースで物流業務を行えます。

物流業務の質が向上する

物流アウトソーシングは、物流業務に特化した知識や技術を持つ人材を積極的に雇用しています。そのため、サービスの質が高いところが特徴です。

例えば、梱包やラッピングを自社の従業員で行おうとすると、得意不得意があるため仕上がりに差が生まれます。物流アウトソーシングでは一定の基準を満たした従業員が行うので、均一な質に仕上がります。

また、物流業務に慣れている従業員が従事しているため効率がよく、配送までのスピードアップも見込めます。物流アウトソーシング先によっては最新のシステムや装置を搭載しており、テクノロジーと人材の2つの力で最適化を行っています。

その結果、高品質なサービスを短期間で提供でき、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

物流への資源投入を抑えられる

注文量が増えて本格的な自社物流の導入を検討する場合、倉庫や物流システム、人材の確保など多くの固定費がかかります。長期的に一定の注文が確保できればいいのですが、注文量に増減があると固定費が利益を圧迫することが考えられます。

物流アウトソーシングではすでに倉庫や物流システムなどの設備や人材が揃っているため、物流業務への投資が大幅に削減できます。もちろん、物流アウトソーシングへの委託費用は発生しますが、それでも実際に物流アウトソーシングを導入した企業の38.5%がコストの削減ができたと回答しているのです。

物流アウトソーシングを導入して感じたメリット.jpg※東海3県の物流企業 166社の回答を分析

参考:経済産業省・中部経済産業局「物流アウトソーシングマニュアル

物流資源への投入を削減して、長期的に経営しやすい基盤が作れるのも物流アウトソーシングならではのメリットだと言えるでしょう。

コア業務に集中できる

注文量が増えると物流業務に費やす時間が増え、本来の業務に注力する時間が減ってしまいます。例えば、自社の従業員で物流業務を分担して行っている場合、注文量が増えると物流業務に労力を割くことになります。

本来ならば新商品の開発やリピーターの獲得など行いたい業務があるのにも関わらず、なかなか時間を確保できません。その結果、機会損失や収益の減少につながるかもしれません。

物流アウトソーシングを活用すると、物流業務をコア業務と切り離して考えることができます。そのため、物流業務に使う時間を大幅に削減でき、本来のコア業務に集中できる環境を作れます。

物流アウトソーシングを活用するときの注意点

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物流アウトソーシングを活用するメリットが把握できたところで、物流アウトソーシングを活用する際の注意点をご紹介します。

物流アウトソーシングを検討している段階で把握しておくと事前に対策を取れるため、チェックしておくといいでしょう。

業務がブラックボックス化しやすい

物流アウトソーシングを活用すると、物流業務が外部化されます。自社内での物流業務量や人材の削減にはなるのですが、物流業務自体を理解、把握できる従業員がいなくなるデメリットがあります。

場合によっては物流業務の工程がブラックボックス化し、物流業務そのものが不透明となる可能性もあるでしょう。

消費者に滞りなく高い品質の物流サービスを提供できていれば問題はありませんが、クレームや商品の遅延などのトラブルが発生した際に改善や原因究明ができる連携体制を整えておく必要があります。

例えば、常に連絡が取れる状態を作ったり定期的に物流業務のチェックを実施したりと、委託先の状態が把握できる仕組みを構築するといいでしょう。

イレギュラーな対応が難しい

物流アウトソーシングは業務内容やサービス内容が決まっており、一定の仕組みに従って作業をしています。委託先によっては一部をロボットや装置に任せているため、そもそもイレギュラーな作業ができない可能性があります。そのため、急なイレギュラー対応は難しい側面があります。

例えば「ある消費者の商品のみすぐに作業をして欲しい」「一人分のみラッピング対応をして欲しい」など、細かな個別対応ができないケースが多いです。

どうしてもイレギュラーな対応をしなければならない場合は、自社で対応するなどあらかじめ対策方法を決めておくと安心です。

機密情報やノウハウが漏えいするリスクがある

物流アウトソーシングに委託する業務内容によっては、顧客情報や取引先情報を委託先と共有することになります。

今まで企業内部でしか扱っていなかった情報やノウハウを外部に渡すことになるため、必然的に情報漏えいのリスクが高まります

顧客情報や企業情報が外部に流出すると、企業の信用を失う事態に発展する可能性があるでしょう。そのため、物流アウトソーシングの委託先を選ぶときにはセキュリティ対策や情報管理体制を確認し、少しでもリスク軽減できそうかチェックすることが欠かせません。

物流アウトソーシングの費用

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物流アウトソーシングでは、主に下記のような業務で費用が発生します。(内訳は委託先によって異なります)

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物流アウトソーシングでは委託先が業務内容を選定し月額の定額サービスとして提供しているものと、必要な業務のみを自由にカスタマイズできるサービスが主流です。

基本的には商品量が多ければ多いほど、コストがかかります。日々の入出庫量や保管したい商品量をふまえた上で、妥当な費用かどうかを検討してみてください。

物流アウトソーシングを始めるタイミング

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「物流アウトソーシングはいつから始めるべき?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこでここでは、物流アウトソーシングを始めるタイミングをご紹介します。

物流アウトソーシングは事業の立ち上げ時だけでなく事業が安定してから導入することも可能なので、自社の状況と照らし合わせながら導入を検討してみてください。

商品の注文が増えて自社対応が難しくなったとき

自社での物流業務が難しくなったときは、物流アウトソーシングを検討するタイミングです。ECや新規事業の立ち上げ時は、自社内に在庫管理スペースを設けてスモールスタートをすることが多いです。

事業が成長し注文が増えると、自社内の在庫管理スペースや体制では物流業務が追いつかなくなります。社内で対応しようとすると人材確保や物流システムの導入、在庫を管理できるスペースの確保など時間とコストがかかります。

物流アウトソーシングを活用すれば人材確保やシステム導入が不要なので、初期投資や時間をかけずに物流体制を整えることが可能です。

・商品の注文量が増えて物流業務に時間と労力を割いている
・自社の設備では物流業務を回せなくなってきた

という場合には、物流アウトソーシングを検討してみるといいでしょう。

事業立ち上げやスタート時のコストを抑えたいとき

新たにECや事業を立ち上げ、物流業務の仕組みを一から構築するときも物流アウトソーシングを検討するタイミングです。

事業立ち上げ時からある程度の収益を見込み、一定の在庫を抱えたり流出加工に対応できる物流システムを導入したりするケースもあるかと思います。

新規事業の立ち上げ自体に資金を投資しているのにも関わらず、物流設備にも投資をするとなると初期費用がかさみます。そこで、スタート時から物流業務はアウトソーシングをすること前提で考えると初期投資の費用を大幅に抑えることが可能です。

・新規事業の開始とともに自社の物流設備、物流倉庫の設置を検討している
・ECの立ち上げ時に自社の物流業務の仕組みを構築したい

という場合には、まずは物流アウトソーシングをして円滑に物流業務ができる仕組みを整えるのも一つの方法です。

コア業務に集中できる環境を整えたいとき

本記事の「5.物流アウトソーシングの4つのメリット」でも解説しましたが、物流アウトソーシングを活用することでコア業務に集中できる環境作りができます。

自社で物流業務をしていると、入出庫業務はもちろんのこと帳票発行や在庫管理など多くの作業を抱えることになります。とくに注文が集中するとどの業務も負担が大きく、つきっきりで行わなければなりません。

その結果、本来の仕事である商品開発や顧客へのフォロー、広報活動に手が回らなくなります。

・コア業務に集中できる環境を作り収益や認知度の向上に努めたい
・コア業務に集中して事業を拡大したい

など、コア業務と物流業務を切り離し、本来の目的や目標に集中したい場合にも物流アウトソーシングは向いています。

物流アウトソーシングを導入する手順

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実際に物流アウトソーシングを導入するときは、下記の手順で進めていきます。

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物流アウトソーシングの導入は計画的に行うことが重要なので、どのように導入するべきかあらかじめ把握しておきましょう。

自社の課題を明確にして委託する範囲を決める

まずは自社の課題を把握して、委託をする範囲を決めます。例えば、在庫管理や入出庫業務は自社で行える範囲だと認識し配送のみを効率化したい場合は、配送業務だけを委託する範囲にします。

また、物流業務全体の効率化やコストダウンを課題としている場合は、物流業務を一括してアウトソーシングするのも一つの方法です。このように、現在の物流業務の課題を明確にして、課題を解決するためにはどの部分を委託するべきかを決めておきましょう。

このときに注意したいのは、委託をすることで生じる課題にも焦点を当てることです。「6.物流アウトソーシングの注意点」で解説したように、物流アウトソーシングを活用することで課題が生まれる可能性があります。個人情報の保護や他のシステムとの連携など課題になりそうなことがあれば、あらかじめ把握しておくと委託先を選ぶときの基準にできます。

現状の物流情報をまとめる

物流アウトソーシングの委託先に、現状の物流業務やシステムを正確に伝えるための資料を作成します。現状の物流業務やシステムが把握できないと、正確なコストや必要な業務が提案しにくくなります。

初期段階で認識の違いがあるといざ物流業務を開始したときにトラブルが起きる可能性があるため、できるだけ明確に現状をまとめて提示をしましょう。情報をまとめるときには

・貨物特性や物流圏域
・在庫量
・納入条件
・物流システムの条件
・現状の課題と目標

などを記載すると現状が把握しやすくなります。

アウトソーシング先を選定、契約をする

現状の課題と物流業務の状況を整理できたら、自社に合うアウトソーシング先を選定します。本記事の「10.物流アウトソーシング先を選ぶときに確認したい4つのポイント」でも詳しく解説しますが、下記のポイントをチェックしながら自社に合う委託先を検討してみてください。

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このチェックポイントを満たし、自社に合う物流アウトソーシング先が見つかったら契約を行います。契約時には物流アウトソーシングへの移行方法や利用開始日なども把握し、スムーズに移行できるようにしておきましょう。

物流業務を移行する

物流アウトソーシング先が決まったら、物流業務の移行を行います。物流業務の移行は、計画的に行うことが非常に重要です。焦って導入をすると現在稼働している現場やシステムに混乱が生じる可能性があるからです。

物流アウトソーシングへの移行への経緯や準備を説明し、段階的に移行を進めていけるようにしましょう。物流業務の移行時にはイレギュラーなことが発生する可能性があるため、委託先と連携を取りながらスムーズに移行できるよう進める必要があります。

物流アウトソーシングの委託先を選ぶときに確認したい4つのポイント

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最後に、物流アウトソーシングの委託先を選ぶときに確認しておきたい4つのポイントをご紹介します。
自社に合う委託先を選ぶために知っておきたいポイントばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。

委託したい業務内容とマッチしている

物流アウトソーシングの委託先を選ぶときには、依頼したい業務内容を網羅しているか確認をしましょう。

「2.物流アウトソーシングに依頼できる業務内容」で解説したように、物流業務は多岐に渡ります。すべての物流業務に対応している委託先もあれば、一部の業務に特化している委託先もあります。

そのため「すべての物流業務を委託したい」「在庫管理を委託したい」など、委託したい業務内容と一致しているか細かく確認することが欠かせません。

とくに、ラッピング対応や流通加工などの細かな業務の扱い方は委託先によって大きく異なるため、委託を検討している際は細かくチェックしておくといいでしょう。

導入コストだけでなくランニングコストを踏まえて長期運用が可能か

物流アウトソーシングの導入は規模によっては大掛かりな作業となるので、長期運用が前提となります。

例えば、大量の在庫を抱え物流拠点を一元化するために物流アウトソーシングを活用する場合、在庫の移動や拠点の構築だけでも非常に大変なので簡単には委託先の変更ができないでしょう。

そう考えると、あらかじめ長期運用を念頭においたランニングコストか確認をする必要があります。委託する業務内容やおおよその商品量を考慮しながら、負担なく委託を継続できるか考えて委託先を決めるようにしましょう。

フォロー体制が整っているか

物流アウトソーシングの委託先を決めるときには、フォロー体制の有無も重要なポイントです。とくに、物流業務を一括して委託する際は、企業と委託先がスムーズに連携できないと物流業務がブラックボックス化してしまいます。

顧客からの問い合わせや物流過程でのトラブルなどが発生した際の対応ができず、納期の遅延や顧客満足度の低下につながる可能性があるのです。

・物流アウトソーシングの委託先とどのように連携ができるのか
・物流業務の状況はどのように把握できるのか
・トラブルが発生したい場合のフォロー体制

など、安定した物流サービスの提供ができる仕組みが整っているか確認をしておくと安心です。

自社の課題を解決できる実績やスキルがあるか

せっかく物流アウトソーシングを活用しても、自社の課題が解決できなければ意味がありません。委託先の物流アウトソーシングを活用することで、自社の課題を解決できるのかも確認しておきましょう。

例えば、物流サービスの質を向上し顧客満足度をアップさせたいと思っていても、物流加工やラッピングやクーポン同封などの梱包に対応していなければ課題の解決にはつながらないでしょう。

一方で、物流業務の効率化を課題としている場合に、最新の物流システムや装置を活用し物流工程の短縮化や簡略化に取り組んだ実績のある委託先を選択すると、スムーズに業務効率化が実現するかもしれません。

このように、自社の課題を解決できるスキルや実績、設備があるかどうかもチェックしてみてください。

シェアリング型の新しい倉庫寄託サービス「WareX」

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WareX(ウェアエックス)は、シェアリング型の新しい倉庫寄託サービスです。「商品の在庫を保管できる場所がない」「物流業務まで手が回らない」など、課題に応じた活用ができます。WareXならではの強みは、次の4つです。

1. 全国の倉庫から検索可能
WareXには、日本全国の倉庫が登録されています。物流拠点や営業所の近くなど、倉庫が必要な場所に応じて利用できます。

2. コストが日割り計算で分かりやすい
保管料は日割り&パレット建て、作業料はパレット建てと分かりやすい料金設定です。保管料は日割りなので倉庫を使った日数分しかコストが発生しません。

3. 倉庫のオペレーションはオンラインで一元管理
オンライン上で倉庫の検索から清算までを完結できるため、管理者さまの手間や労力を最小限に抑えられます。

4. 手配するのは輸配送のみ
国の認可を得た安心安全な倉庫で商品をお預かりします。機器や作業員、備品の手配は不要です。輸配送のみの手配で利用できるので、幅広いニーズに対応できます。

WareXは、最短3日での利用開始実績があります。全国の倉庫を検索、空き確認を済ませればすぐに契約をして利用を開始できます。

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実際に、繫忙期に商品を保管するための外部倉庫導入に成功した事例もあります。マンパワーでの倉庫探しには限界を感じていましたが、WareX(ウェアエックスの利用で立地や条件のいい倉庫に出会えました。

事例の詳細はこちら:「WareXを利用して、よりセンターに近い倉庫を発見!

倉庫の確保や在庫の管理にお困りの場合は、ぜひ利用してみてください。

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まとめ

いかがでしたか?物流アウトソーシングとはどのようなものなのか把握でき、導入を検討できるようになったかと思います。

最後にこの記事の内容をまとめてみると

〇物流アウトソーシングとは、自社の物流業務を外部に委託すること

〇物流アウトソーシングで委託できる主な業務は下記のとおり
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〇物流アウトソーシングの主な委託パターンは下記のとおり
1)個別の物流業務のアウトソーシング:物流業務ごとにアウトソーシング先を選択する方法
2)物流業務を包括したアウトソーシング:物流業務を一括してアウトソーシングする方法
3)ロジスティクスの最適化を志向した物流アウトソーシング:商品の調達や拠点間物流をふまえて一元的に管理をする方法
4)物流管理領域を拡大したアウトソーシング:物流業務だけでなく企業の物流戦略においても外部委託をする方法

〇物流アウトソーシングを活用するメリットは次の4つ
1)物流業務に携わる人材の確保や人材育成が必要ない
2)物流業務に精通したプロフェッショナルに委託できるため物流サービスの質が向上する
3)物流設備やシステムの導入など物流への投資削減できる
4)本来取り組むべきコア業務に集中できる

〇物流アウトソーシングを活用するときの注意点は次の3つ
1)自社内に物流業務を把握している従業員がいなくなるため物流業務自体がブラックボックス化しやすい
2)物流業務を仕組み化しているためイレギュラーな対応が難しい
3)自社の情報を委託先と共有するのでセキュリティ上のリスクが高くなる

〇物流アウトソーシングの費用は一般的に扱う商品量が増えると高くなる

〇物流アウトソーシングを始めるタイミングは次の3つ
1)商品の注文量が増えて自社での物流業務対応が難しくなった場合
2)新規事業を立ち上げるときの初期費用を抑えたい場合
3)自社のコア業務に集中したい場合

〇物流アウトソーシングを導入する手順は次のとおり
1)自社の物流業務の課題を明確にして委託する業務の範囲を決める
2)正確な情報を共有するために現状の物流情報をまとめる
3)アウトソーシング先を選定し契約をする
4)計画的に物流業務を移行する

〇物流アウトソーシングの委託先を選ぶときのポイントは次の4つ
1)委託したい業務内容と業務範囲が一致している
2)長期運用を前提として導入コストだけでなくランニングコストを踏まえて検討する
3)物流業務がブラックボックス化しないようにフォロー体制が整っている
4)自社が抱えている課題を解決できる実績やスキルを持っている

この記事をもとに物流アウトソーシングのメリットや委託範囲が把握でき、具体的な導入が検討できることを願っています。